rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年1月3日 党中央委第8期第4回全員会議コメント(続)

 

 標記に関し、金正恩の「結論」に示された新年度の課題部分について述べたい。

 まず、その「基本課題」としては、「5か年計画遂行の確固たる担保を構築し、国家発展と人民生活において顕著な改変を成し遂げ、祖国青史に栄えある1ページを刻むこと」とした上で、「社会主義建設の基本戦線である経済部門では、現行生産を活性化しつつ、整備補強事業をより力強く推進し、国の経済を正常軌道に乗せ、人民に安定し向上した生活を提供することに総集中」することを訴えており、概して経済部門重視の姿勢がうかがえる。

 ただ、経済部門の具体的内容を見ると、金属、化学、電力、石炭、鉄道運輸、機械といった基幹工業部門をまず述べた後で、「人民の食衣住問題を解決する上で画期的な前進を成し遂げる」「農事に力を集中する」「(住宅建設などの)基本建設を最優先順位に置く」などとしており、結局、従前同様の総花的構成と言わざるを得ない。また、そうした中で、「学生に国家的負担で制服と学用品を保障する」ための「党中央委員会的な重大措置」を講じたとしているが、人民生活重視の誇示のためとはいえ、やや唐突な感が否めない。

 また、経済管理に関しては、「内閣の経済組織者的機能と役割を強化」し、「経済活動を正規化、規範化の軌道に乗せる」ことを訴えている一方、いわゆる「市場経済的」要素や「経済管理の改善」と言った表現はみられないことは、このところの計画的集権的経済運営強化の方向を示しているといえよう。更に言えば、経済活動が「正規化」できていないという現状がうかがえる。その実態はどのようなものなのであろうか。

 次に挙げられているのが、科学、教育、保健、文学芸術、出版報道などであるが、これも従前の延長線上の内容で、続けて、「(新型コロナに対する)非常防疫事業を国家事業の第1順位に置いて」引き続き推進すべきと訴えている。

 その後、「反社会主義、非社会主義との闘争」の更なる強化に加え、「法機関の役割を高め、社会秩序と人民の安寧を徹底して担保する」ことを訴えている。前者は、このところ恒例の表現と言えるが、後者は目新しいのではないか。その背景に全般的な治安の悪化がうかがわれる。

 「国防部門」に関しては、「国家防衛力強化を一時も遅れることなく一層力強く推進」、人民軍を「革命的党軍として強化」などの課題とともに、「軍需工業部門」における「現代戦に相応した威力ある戦闘技術機材開発生産」の促進、「現代戦の要求に即した民防衛武力を強化」などを掲げている。一方、「核、ミサイル」を直接示唆する表現はなく、通常戦力装備の近代化を幅広く進める姿勢が垣間見られる。

 「北南関係と対外事業関係」については、1日付けの本ブログで既述のとおり具体的内容への言及はなかった。様々な状況に柔軟に対応できるよう選択の余地を残したのではないだろうか。

 最後に党活動に関する言及があり、「党事業を不断に改善し、全党を学習する党にしてゆき、党中央と思想と志、行動を共にする一つの生命体となるようにし、党幹部の水準と能力を決定的に高める」ことなどを訴えた。

 結局のところ、細かい点を除くと概して従来の延長線上の内容に終始しており、特徴のないのが特徴とさえ言えよう。しかし、そのことは、2日付けの本ブログで指摘したとおり、昨年、金正恩が画期的とも言うべき構想を提示したことと照らし合わせて考えると、実は、非常に不思議なこととも言えるのではないだろうか。