rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年1月2日 党中央委第8期第4回全員会議コメント

 

 標記に関し、思いつくままにいくつかコメントしたい。

 最初は、今次会議の日程が中央委員会全員会議史上最長とされる5日に及んだことについてである。会議においては、「分科別研究及び協議会を3日間行った」とされ、その目的が、具体的・細部的な新年度計画の樹立であったことを勘案すると、同計画の策定を綿密に行うために、こうした日程を組んだと考えられる。

 これは、昨年の場合、党大会の決定を受けて内閣を中心に樹立した年間計画が不適切と厳しく批判され、2月に中央委員会全員会議を改めて開催してその策定を行った経験を踏まえての措置と考えられる。

 次に、本来であれば議題にされてしかるべきところ、そうならなかった案件があることを指摘したい。例えば、本ブログで先般来取り上げている「全面発展」方針であるとか、「3大革命」路線再強化の具体策としての「3大革命赤旗獲得運動」の範囲拡大方針などは、全党的な重要問題と思われるが、今次会議でそれが正面から取り上げられることはなかった。それらは、農業問題に関する金正恩の「報告」の中に部分的に反映されていたとはいえるが、上述の分科別研究・評議会、そしてそこでの結果をとりまとめた「決定書」では、新年度の課題という形でしか反映されていないように思える。要するに、金正恩が「報告」で提示した中長期的構想は、言いっぱなしに終わってしまったことになる。いわんや「3大革命」の再強化といったことは、ほとんどとりあげられていない。

 余談だが、朝鮮中央放送が放映した同会議の記録映像を見ると、金正恩が「結論」を述べる部分は、自分の席に座ったまま話している場面と演説台に立って話している場面とが繰り返されている。これが何を意味するのか判然としないが、実際には、同人が記事で報道されたのとは異なる形で発言していることは間違いないと考えられる。記事は、そうした各種発言内容を踏まえつつ、相当整理した形で記載しているのであろう。

 次に昨年の成果とされた内容について。最も強調されているのが農業部門であるが、これに関し、韓国の報道では、自然災害がなかったことなどを要因として挙げている。しかし、金正恩としては、そうではなく、「いかなる条件においても農事を安定して行うことができる確信を持つに至った」こと、換言すると、自然災害の影響を軽微なものにとどめうる態勢を整備したことこそが本当の成果として誇りたいところなのであろう。

 一方、建設部門も、成果が強調されているが、実際は、その目玉であるはずの平壌市内における住宅「1万世帯建設」は、「基本的に結束」であって完成ではない。三池淵市整備第3段階も同様である。 いわんや、基幹工業部門などは、昨日のブログでも指摘したとおり金属.化学部門への言及がないことをはじめ、実際はみるべき成果がないといっても過言ではないと思われる。

 そうしたことを総合的に勘案すると、昨年について「偉大な勝利の年」とした評価は、少なくとも経済面での実績を率直に反映したものとはいえないであろう。厳しい環境の中でも混乱・挫折などをすることなく生きながらえたことがすなわち「偉大な勝利」であるという意味と考えるのが妥当なのかもしれない。更に言えば、本ブログでこれまで指摘したように、このところ金正恩の指導方針に対する懐疑が一層拡散しているとするなら、少なくとも表面的には、そうした評価を示すしかなかったと考えられる。