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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年1月3日 党中央委第8期第6回全員会議拡大会議結果まとめ

 

 1月1日付け「労働新聞」には、予想どおり、12月26日から31日まで6日間にわたり開催された標記会議に関する記事が掲載された。それは、基本的には、既にこれまでの報道で紹介されていた30日までの概況に31日最終日の進行状況を加えたものであったが、金正恩「報告」の国防建設・対外方針に関する言及など、従前よりも詳細・具体的な紹介がなされた部分もあった。

 これまでの報道を総合して、同会議の主な結果について議題ごとにまとめると次のとおりとなる。

第1議題:「2022年度主要党及び国家政策の執行状況総括と2023年度事業計画について」

  • 金正恩が3日間(26~28日)にわたり「報告」(内容の注目点については、別途紹介予定)
  • 金徳訓総理が「提議」、その他幹部が「討論」及び「書面討論」(28日)
  • 分科別研究及び協議会(党・政府の幹部が指導)で「草案」を検討(29日)、部門別指導小組が集約(30日)
  • 第8期第12回政治局会議を開催(30日)、「決定書草案」に関する意見を最終完成
  • 全員会議(31日)において「決定書」採択(「決定書」の内容は未公表)

第2議題「組織問題」(28日)

  • 中央委員、同候補委員を召喚・補選(中央委員:17人、候補委員26人)
  • 政治局委員、同候補委員を召喚、補選(委員:朴守日軍総参謀長、候補:朱昌日党宣伝扇動部長、朴熙用党組織指導部第一副部長、金守吉平壌市責任秘書、金相健党規律調査部長、康順南国防相
  • 党秘書を解任(朴正天)、選挙(李英吉)
  • 中央軍事委員会副委員長を召喚(朴正天)、補選(李英吉)
  • 中央検査委員会副委員長を召喚、補選(金相健)
  • 党中央委部長、第一副部長を解任、任命(呉日亭民防衛部長、金相健規律検査部長、金容守財政経理部長、李恵正党歴史研究所長、金英植
  • 道党責任秘書を解任、任命(金守吉平壌市党責任秘書、朴泰徳黄海南道党責任秘書、白成国江原道党責任秘書)
  • 政府機関幹部を解任、任命(金哲河化学工業相、金創石軽工業相、趙石哲品質監督委員長、李英植内閣政治局長兼党委員会責任秘書)
  • 武力機関指揮官を解任、任命(朴守日軍総参謀長、康順南国防相、李泰摂社会安全相←総参謀長から)

第3議題「2022年度国家予算執行状況と2023年度国家予算案について」

  • 国家予算審議組が検討、提起(28日~)
  • 政治局会議で承認(30日)
  • 全員会議(31日)で最終審議し、最高人民会議第14期第8回会議に提出を承認

第4議題「革命学院に対する党的指導を強化することについて」

 31日の全員会議において、「討議」(金正恩司会)の上、「該当決定書を一致可決」

第5議題「新時代党建設の5大路線について」

 31日の全員会議において、金正恩が「報告」、(同人が党中央幹部学校での講義において提示した)「新時代5大建設方向」を「正式に党の路線として策定することを全員会議に丁重に提議」、「5大方向を我が党の新時代党建設路線として策定することに関する決定書」を「全員一致で採択」

 31日の会議は、第5議題採択後、金正恩が「閉会辞」を行って閉幕。

 以上のような今次全員会議における注目点は、次の3点である。

 何よりも、国防建設に対する重視、加速の姿勢が誇示されたことである。これは、金正恩の「報告」における表現ぶりにおいても示されたが、それ以上に会議最終日(31日)に会議場である党中央庁舎前において、「偉大な我が党全員会議に捧げる軍需労働階級の忠誠の贈り物600㎜超大型放射砲贈呈式」が盛大に開催された(放射砲台車30両を展示、金正恩が「答礼演説」)ことに加え、第2経済委員会が同日に3発、翌1月1日に1発の「超大型放射砲検収射撃」を実施したことが報じられたことにより、内外に一層強く印象つけられたといえる。なお、軍需部門要員に対しては、金正恩の命により、「主賓」として招待して盛大な「2023年新年慶祝宴会」を開催(12月31日)したほか、錦繡山太陽宮殿への参拝が報道されるなど、格別の厚遇がほどこされている。

 2番目は、「組織問題」で記載のとおり党・軍・政府機関に及び大幅な人事異動が行われたことで、中でも、事実上、軍の第一人者と目されていた朴正天が更迭されたことは驚きである。同人は、同議題採択以後、会議場でも、また、その他の行使行事にも姿を現していないことから、公式報道はないが、常務委員などの地位もすべて失ったと考えられる。また、就任から間もない李泰摂総参謀長の社会安全相への異動も事実上の左遷とみられ、作戦系列における何らかの不祥事の問責人事と考えられる(韓国報道では、韓国軍の無人機が北朝鮮に浸透したことを覚知できなかったことを理由と見ているようだが、我田引水の感あり疑問)。1番目にあげた点との関連でいうと、軍事建設は加速するが、それは、決して軍人、軍関係者の台頭を意味するものではないということであろう。

 3番目は、全員会議そのものではないが、同時期における出来事として、朝鮮少年団第9回大会(26日~)参加者に対する厚遇ぶりが強調されたことである。1月1日には、金正恩との記念写真撮影が行われたほか、金正恩からの「贈り物」伝達集会が開催され、大会参加者全員に腕時計が授与された(ちなみに、韓国報道によると授与されたのは、セイコー製のアルパとのこと。本当だろうか)。今次全員会議において「革命学院」に対する指導強化が議題とされたことともあわせて、このところの「後代」重視の姿勢を反映したものといえよう。

 一方、経済関係については、昨年の成果に関しても新年の目標に関しても、具体的な数値や新味のある方向性などはほとんど示されず、従前の延長線上で、「5か年計画達成」「整備補強」「人民生活向上」などの訴えが繰り返されただけであった。結局、可視的に示すことのできる確実な成果は(住宅建設を除くと)、軍備増強だけというのが実情なのかもしれない。