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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年6月16日 党中央委員会第8期第3回全員会議が開幕

 

 本日の「労働新聞」は、標記会議が6月15日から、金正恩の指導の下、開催されたことを報じた。

 会議には、党中央委部署幹部、省・中央機関、武力機関幹部、道級指導的機関(人民委員会、農村経理委員会などであろう)、市、郡、連合企業所の責任幹部(首長)が傍聴したとされる。

 なお、報道写真によると、会議場主席檀には、前列に金正恩を中心に政治局常務委員5人が、後列にその他の政治局委員10人が着席している。ただし、第1回全員会議で政治局委員の筆頭に紹介された朴泰城宣伝秘書(宣伝扇動部長)は姿が見えない。同人については、このところ出現報道もなく更迭の可能性が指摘されていた。

 会議では、まず金正恩が冒頭発言を行ったとみられる。その内容は、前回の全員会議以来、困難な状況を克服しつつ「肯定的な成果」を挙げていることを「高く評価」し、「上半年期間の工業総生産額(で)計画を144%、昨年同期比125%と超過遂行」、「現物量的にも多く成長」していることを明らかにする一方、「一連の偏向も生まれている」こと、特に、「現在、人民の食糧状況が緊張してきている」ことなどを指摘した上で、「全党と全人民の昂揚した闘争気勢をより高潮させ、今年の政策的課題を無条件に完遂するための徹底した対策を立てることが今般全員会議を招集した基本趣旨」であるとするものであった。

 これに続いて金正恩の提案により、主な議題として、①主要国家政策の上半年度執行状況総括と対策、②今年の農業に力を総集中すること、③非常防疫状況の長期化への対応、④現国際情勢に対する分析と我が党の対応方向、⑤人民生活の安定向上と育児政策の改善強化、⑥組織問題、が上程された。

 第1議題に関する討議においては、金徳訓総理が「今年の経済部門に提示された政策的課題の執行状況」、朴正天軍総参謀長が「人民軍隊事業」、金才龍竜党組織指導部長が「反社会主義、非社会主義との闘争状況」について、それぞれ報告を行った。

 その後、金正恩が同議題の「結論」として、経済部門に関し「各部門において達成した成果と経験を拡大し、現れた偏向と欠陥を克服」しつつ、「先進科学技術に徹底して依拠して今年の経済計画を無条件完遂」することを訴えた。また、「文化建設」に関し「事業を革新的に組織展開し、社会主義制度の優越性をより高く発揚させる」ことを、「反社会主義」に関し「(それとの)闘争をより攻勢的に実質的に展開する上で指針とみなすべき原則的問題を闡明」したとされる。更に、「現時期、党事業を深化発展させる上で提起される重要な課題」を示した上で、すべての部門・単位が「百倍に奮発奮闘して、今年の戦闘目標を輝かしく完遂」することを訴えたとされる。なお、「人民軍事業」に関する言及は紹介されていないが、何がしかの指示はあったと考えられる。

 第2議題に関しては、李哲万党農業部長が「現在までの営農事業実態について具体的に報告」した上で、やはり金正恩が「全党的、全国家的な力を農事に総集中すること」を訴え、とりわけ、「災害性異常気象の影響を克服」するための対策を指示したとされる。

 第3議題に関しては、「現実態を分析した報告」(報告者名は未報道)を聴取した金正恩が「非常防疫状況の長期化」について、「強い(防疫)規律遵守気風の長期化と同時に経済全般を維持し、人民に食衣住を保障するための闘争の長期化」を意味するとした上で、「人民の生活上の要求を適時に円満に解決する事業に優先的に力を注ぐことについて特別に強調」し、「人民生活と直結する部門において生産を増やすための革命的な対策を立ててくださった」とされる。

 報道は、「全員会議は継続される」と報じており、第4議題以降は、16日の会議で討議されていると考えられる。

 以上の報道を見た限りでは、概ね想定内の内容といえよう。強いて特徴を挙げれば、第1議題に関し、上半年(5月までの意味か)の工業総生産の対計画比率が示されたこと、「反社会主義」活動が別枠で取り上げられたこと、第3議題に関し、人民生活への悪影響軽減への強い腐心が示されたことといえようか。また、第1議題の中で敢えて「人民軍隊事業」が報告されたことの意味・背景についても、具体的内容をうかがわせる報道がないだけに注目される。

 ただ、最大の注目点は、やはり第4議題に関し、どのような対外方針が示されるかであろう。明日の報道がまたれる。