rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年1月3日 党中央委第8期第9回全員会議拡大会議の開催概況(事後動向含む。修正加筆版)

 

 標記に関しては、「労働新聞」記事で示された範囲で逐次紹介してきたが、その後、朝鮮中央放送の同会議を報じた映像などで、若干の事実関係が判明した(下線)。また、1月1日以降の「労働新聞」において、同会議閉幕後の関連活動が報じられた。それらを含めて改めて一括整理した同会議の概況は、次のとおりである。

  • 31日付け本ブログでは、日程中に、30日に行われた活動の一部を「31日」として誤って記載していました。お詫びして、後述のとおり修正します

1 会期:2023年12月26日~30日(5日間。第6回全員会議は、12月26日~31日の6日間)

2 参加者等

  • 参加者:常務委員会委員、政治局委と候補委員、中央委員会委員(8党大会選出時139人)と候補委員(同111人)
  • 傍聴者:「党中央委員会部署の幹部、省、中央機関、道級指導的機関、市、郡、重要工場、企業所の責任幹部、今年の農業生産で模範的な市・郡農業経営委員長」(会場着席者は、約1,000人。傍聴者が正規参加者の約3倍と推測)
  • 金正恩への言及等:「会議に参席された」とした上で、「政治局の委任により・・会議を司会された」と報道

3 進行状況

ア 26日(初日)

  • 議題決定金正恩が提案・採択):①2023年度の党および国家政策の実行状況に対する総括と2024年度の闘争方向について、②児童・生徒のための社会主義的施策の実行で責任感を強めることについて、③党中央検査委員会の2023年度の活動状況について、④2023年度の国家予算執行状況と2024年度の国家予算案について、⑤現段階において党の指導的機能を強化するための一連の措置について、⑥組織問題
  • 第1議題討議:金正恩の「報告」(「2023年度の党および国家政策実行状況総括について」)に続き、「討論」(金徳訓内閣総理、最高人民会議常任委員会・崔龍海委員長、党中央委員会・李哲萬部長、強純男国防相、党中央委員会・趙勇元組織秘書が演壇で発言、複数の部門の指導幹部が書面討論提出)

イ 27日(2日目)

  • 金正恩、第1議題「結論」(「2024年度の闘争方向について」)

ウ 28日(3日目)

  • 第2議題:金正恩演壇で「報告」後、自席で靴などを示しつつ発言。「2023年度の制服、かばん、靴の生産および供給実態を具体的に分析」、「新年度も全党的、全国家的な事業として強く推し進める児童・生徒の制服とかばん、靴の生産と供給で堅持すべき原則的問題と実行方途を提起」。(格別の決定等はなし)
  • 第3議題:金在龍が演壇で「報告」。「党の規律建設路線の実行と党事業と党活動を財政的・物質的に保証する上で自己の任務を円滑に遂行したと認めた」
  • 第4議題:国家予算審議組を構成して、検討・審議することを決定
  • 第5議題:趙勇元組織秘書が演壇で報告。その後「当該の決定書を一致可決」
  • 第6議題:金正恩が演壇で提案・採決。中央委員会メンバー、政治局メンバー、党秘書・部長、中央軍事委・中央検査委メンバー、道党責任秘書のほか国家機関重要役職者などを多数改選
  • 決定書草案に関する研究および協議会実施のための部門別分科を組織

エ 29日(4日目)

  • 分科別研究・協議会実施:「(金正恩の)綱領的な結語の思想と精神に立脚して、新年度の闘争課題の徹底した正確な実行計画を樹立」、政治局メンバーが指導

オ 30日(5日目)

  • 分科別研究・協議会続行
  • 第8期第18回政治局会議:趙勇元組織秘書が司会、金正恩の姿なし。「分科別研究および協議会でまとめられた意見を検討し、決定書の草案を修正、補足して全員会議に提出することを決定」。国家予算審議組の審議状況も検討。12高地の設定を全員会議に提起することを決定(金徳訓総理が提案の模様)

  政治局会議結果報告(金徳訓総理)

  • 決定書採択:「第8回党大会が示した5カ年計画の2024年度の課題を貫徹することについて」を全員一致で採択
  • 予算案承認:「2023年度国家予算執行状況と2024年度国家予算案を最終審議し、最高人民会議第14期第10回会議に提出することを承認」
  • 金正恩「閉会辞」:「愛国で団結して第8回党大会が示した闘争目標の達成を目指して一層力強く闘っていこうというのが今回の全員会議の基本思想、基本精神であると述べ、われわれは自分の力、自分の偉業に対する自信に満ちて偉大な人民と共に百倍の勇気と勢い強い奮闘によって未曽有の高貴な勝利と成果を収めた2023年の栄光を2024年へと一層輝かしくつないでいかなければならないと強調」

4 会議終了後の関連動向

ア 金正恩朝鮮人民軍主要指揮官を激励(12月31日)

  • 概況:「朝鮮人民軍大連合部隊長をはじめとする主要指揮官に党中央委員会本部庁舎において会われ、我が軍隊の2023年度闘争功勲を高く評価され、鼓舞激励された」(平素、政治局会議で使用の会議室を利用。着席した軍主要指揮官の後ろで政治局メンバーらが立ったまま傍聴)
  • 注目発言:「敵どもの無謀な挑発的策動によりいつでも武力衝突が生じ得ることを既成事実化し、党全員会議が我が革命武力の前に提示した戦闘的課題を徹底して執行貫徹していくことについて強調」、「もし奴らが反共和国軍事的対決を選択し火の手を上げるなら、瞬間の躊躇もなく超強力的なすべての手段と潜在力を総動員しせん滅的打撃を加え、徹底して壊滅させなければならない」、「2024年を戦争準備強化の新たな全盛期として輝かしていくとの確信を表明」

イ 金正恩、中央指導機関メンバーを激励の晩餐主催(12月31日)

  • 概況:金正恩が「全員会議の討議事業で無限の責任性と固い闘争意志と勇気を示した党中央指導機関メンバー(=党中央委員・候補員)に深い謝意を表し、・・総秘書名義で晩餐を準備」、祝賀演説実施
  • 祝賀演説注目点:①「(2023年の各種成果に言及後)この価値高い成果は、ここに集まった党中央指導機関メンバーすべての苦心のこもった奮闘と無限の献身性により収められたものです。同志たち、1年間、本当にご苦労様でした」、②「我々が理想とする人民の幸福な生活と未来に照らすと、やり遂げた仕事は余りにもの足らず小さいものです。・・人民の期待に常に報いることのできない我々の不足を深く反省し・・引き続き苦心し努力して2024年を偉大な我が国家と人民のために一層奮発する年にしましょう」

ウ 崔善姫、「対敵部門幹部との協議会」開催(1月1日)

  • 概況:「外務相崔善姫同志が該当関係部門幹部と協議会を開催・・李先権同志をはじめとする対南関係部門幹部が参加」
  • 開催目的:「(金正恩が)全員会議において、対南対敵部門の機構を廃止及び整理し、根本的な闘争原則と方向を転換することについての提示された課題を徹底して貫徹するため」 

    全員会議に関するコメントは、上述会議開催後の動向も含め、予定通り、明日掲載の予定です。本年も引き続きご愛読のほど、お願い申し上げます。