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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年12月31日 全員会議の全般状況を報道

 

 本日の「労働新聞」は、かねて開催中の党中央委第8期第9回全員会議拡大に関し、26日の開幕から30日の閉幕までの開催状況をまとめて報じる記事を掲載した。その骨子は、次のとおりである。

1 議事日程概況

26日

 議題決定:①2023年度の党および国家政策の実行状況に対する総括と2024年度の闘争方向について、②児童・生徒のための社会主義的施策の実行で責任感を強めることについて、③党中央検査委員会の2023年度の活動状況について、④2023年度の国家予算執行状況と2024年度の国家予算案について、⑤現段階において党の指導的機能を強化するための一連の措置について、⑥組織問題

 第1議題:金正恩の「報告」(「2023年度の党および国家政策実行状況総括について」特徴点後述)に続き、「討論」(金徳訓内閣総理、最高人民会議常任委員会・崔龍海委員長、党中央委員会・李哲萬部長、強純男国防相、党中央委員会・趙勇元組織秘書、複数の部門の指導幹部が書面討論提出)

27日:金正恩、第1議題「結論」(「2024年度の闘争方向について」特徴点後述)

28日

 第2議題(「児童・生徒のための社会主義的施策の実行で責任感を強めることについて」):金正恩「報告」(「2023年度の制服、かばん、靴の生産および供給実態を具体的に分析」、「新年度も全党的、全国家的な事業として強く推し進める児童・生徒の制服とかばん、靴の生産と供給で堅持すべき原則的問題と実行方途を提起」。格別の決定等はなし)

 第3議題(「党中央検査委員会の2023年度の活動状況について」):「党の規律建設路線の実行と党事業と党活動を財政的・物質的に保証する上で自己の任務を円滑に遂行したと認めた」

 第4議題(「2023年度の国家予算執行状況と2024年度の国家予算案について」):国家予算審議組を構成して、検討・審議することを決定

 第5議題(「現段階において党の指導的機能を強化するための一連の措置について」):「当該の決定書を一致可決」

 第6議題(「組織問題」):中央委員会メンバー、政治局メンバー、党秘書・部長、中央軍事委・中央検査委メンバー、道党責任秘書のほか国家機関重要役職者などを多数改選(詳細後述)

29日:分科別研究および協議会:「(金正恩の)綱領的な結語の思想と精神に立脚して、新年度の闘争課題の徹底した正確な実行計画を樹立」、政治局メンバーが指導

30日

 分科別研究および協議会続行

 第8期第18回政治局会議:「分科別研究および協議会でまとめられた意見を検討し、決定書の草案を修正、補足して全員会議に提出することを決定」、国家予算審議組の審議状況も検討

31日

 政治局会議結果報告(金徳訓総理)

 決定書採択:「第8回党大会が示した5カ年計画の2024年度の課題を貫徹することについて」を全員一致で採択

 国家予算案承認:「2023年度国家予算執行状況と2024年度国家予算案を最終審議し、最高人民会議第14期第10回会議に提出することを承認」

 金正恩、結び発言:「愛国で団結して第8回党大会が示した闘争目標の達成を目指して一層力強く闘っていこうというのが今回の全員会議の基本思想、基本精神であると述べ、われわれは自分の力、自分の偉業に対する自信に満ちて偉大な人民と共に百倍の勇気と勢い強い奮闘によって未曽有の高貴な勝利と成果を収めた2023年の栄光を2024年へと一層輝かしくつないでいかなければならないと強調」

 

2 金正恩の「報告」、「結論」における特徴点

  • 「報告」:今年度の活動結果について、「社会主義建設と国力強化の各方面で今後の前進速度を一層速められる有利な条件と強固な足場を築く画期的な成果を収めた」などと自賛、諸方面の成果を列挙。特に、経済分野では各種指標を上げつつ(異例のこと)、「人民経済発展12高地」をすべて達成、2020年度比で「国内総生産(GDP)は1.4倍」などと主張、
    • 穀物は103%、電力、石炭、窒素肥料は100%、圧延鋼材は102%、非鉄金属は131%、丸木は109%、セメント、一般織物は101%、水産物は105%、鉄道貨物輸送量は106%であり、住宅は建設中の世帯数が109%」
  • 「結論」:米韓の対北動向に対する長文の批判を展開の上、軍事力整備の加速化及び韓国との「戦争準備」促進姿勢をこれまで以上に鮮明化、「対敵活動で断固たる政策転換」を表明
    • 「現在の重大な情勢は、・・・圧倒的な戦争対応能力と徹底して完全な軍事的準備態勢を完璧に整えるための事業に引き続き拍車をかけることを求めている」、「万一の場合、発生しうる核危機事態に迅速に対応し、有事の際に核戦力を含む全ての物理的手段と力量を動員して南朝鮮の全領土を平定するための大事変の準備に引き続き拍車をかけていくべきである」
    • 「2024年に3つの偵察衛星を追加に打ち上げることに関する課題が宣明」
    • 「北南関係は、これ以上、同族関係、同質関係ではない敵対的な両国関係、戦争中にある両交戦国関係に完全に固着された」、「党中央委員会統一戦線部をはじめとする対南事業部門の機構を整理、改編するための対策を立て、根本的に闘争の原則と方向を転換すべき」

3 組織問題(人事)結果:顔写真が掲載された者は以下のとおり

秘書兼軍需工業部長 趙春竜:政治局候補委員から委員に補選

秘書兼軍政指導部長 朴正天:中央軍事委副委員長、政治局委員に補選

秘書兼経済部長   全現哲:政治局委員に補選

規律調査部長    金哲三:中央検査委副委員長、政治局候補委員に補選

組織指導部副部長  崔準浩:中央検査委委員に補選

中央検察所所長   金哲源:中央検査委委員に補選

秘書兼幹部部長   金在龍

宣伝扇動部長    朱創日

農業部長      朱哲規

咸鏡北道党委責任秘書  金英換

平安北道党委責任秘書  朴成哲

内閣副総理兼農業委員長 李哲万

内閣副総理       金明勲

国土環境保護相     金慶準

鉄道相         局明浩

保健相         鄭茂林

採掘工業相       李相度

国家科学技術委員会   李忠吉

中央検察所長      金哲源

金正恩国防総合大学総長 全日浩

第2経済委員会委員長  高兵現

このほか、中央委員会委員に補選は、候補委員からが6人、直接が11人の計17人。中央委員会候補委員委に補選は、20人。なお、いずれの職務も解任された者の氏名は公表されず。

 

お知らせ

会議結果に対するコメントは、年明け4日ころに掲載の予定です。

それまでは、休止させていただきます。本年もご愛読ありがとうございました。

皆様、どうか、佳いお年を迎え下さい。