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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年12月29日 党中央委員会第8期第11回全員会議拡大会議の開催を報道(速報版)

 

 本日の「労働新聞」は、標記会議が12月23日から27日までの5日間、金正恩の「司会」の下で開催されたことを報じる記事を掲載した。その概況は、次のとおりである。

  • 出席者:「党中央委員会の委員、委員候補が会議に参加し、党中央委員会の各部署の幹部と省・中央機関、道級指導的機関の責任幹部、市・郡党責任書記と人民委員長、主要工場・企業の党・行政責任幹部、人民軍の当該の指揮官が傍聴」
  • 金正恩開会辞:今次会議で、「国家の正常な発展を阻害する否定的要素を克服するための積極的な対策を講じ(る)」ことなどを強調
  • 第1議題「2024年度の党及び国家政策実行状況総括と2025年度の闘争方向について」:「報告」(音声?)聴取、金正恩「結論」(内容別途記載)
  • 第2議題「党中央検査委員会の2024年度の活動状況について」:「報告」(「党規律建設路線の貫徹と党事業と党活動を財政的・物質的に裏付ける活動で収めた成果に触れ、・・偏向的問題が厳正に指摘」)、「2024年度活動状況に対する当該の評価を下した」
  • 第3議題「わが党の新しい地方発展政策と今後の課題について」
    • 金正恩発言:「地方発展20×10政策」を「前例のない膨大な創造闘争」、「新しい歴史を創造する一大革命」などと自賛、「新浦市に浅海養殖業の新しいモデルとなる近代的な浅海養殖事業所が建設」に言及、「全国の市・郡に保健医療施設と複合型文化中心、穀物管理施設を追加的に建設することにした意図に言及し、3大必須対象建設が持つ意義と具体的な建設方向について概括」の上、「地方工業工場と共に追加的に先進的な保健医療施設と科学・教育および生活文化施設穀物管理施設まで並行して建設することを党の新しい地方発展政策に正式に含めることを総会に提議」
    • 「討議」:趙勇元秘書、鄭慶沢総政治局長、咸鏡南道党委・李正南責任秘書が討論、各部門の幹部が書面討論。「地方発展大綱に絶対的な支持・賛同を表明」、「新時代の地方発展政策の完璧な実行を徹底的に裏付けていく決意を固めた。」
  • 第4議題「国の教育土台の強化のための一連の措置を実施することについて」
    • 「報告」(朴泰成?):「全般的な教育土台を時代の要求に即して一層固める・・ために国家的に対策を立てるべき問題を総会に提起」
    • 金正恩「結論」:「教育振興の優先性と必須性、その意義に言及」の上、「全般的な教育土台は時代と革命の要求に応じていないとし、教育部門の現在の実態を厳密に分析し、・・当面の中長期的な課題を明示」、「今後10年内に全国の全ての学校を一新させる」
  • 第5議題「2024年度の国家予算執行状況と2025年度の国家予算案について」:国家予算審議組の設置を決定
  • 第6議題「党内機構活動について」:「当該の決定書を一致可決」(審議内容等不詳)
  • 第7議題「組織問題」:①金徳訓総理を解任(党秘書・経済部長に)、後任は朴泰成(党秘書)・常務委員に昇格。②政治局委員に昇格:李永吉(総参謀長)、崔善姫(外相)、努光鉄(国防相)、金正官(副総理)、李煕用(党秘書・幹部部長、中央検査委委員長)、崔東明(党秘書・科学教育部長)。③政治局委員候補に昇格:方頭燮(社会安全相)、金哲元(中央検察所所長)、④平安北道党委員会責任秘書:金哲三
  • 分科別研究及び協議会(2日間。25~26日?)):「金正恩総書記が議題の討議過程で行った教示と綱領的な結語の思想と精神に立脚し、2025年度闘争課題の徹底かつ正確な実行計画を樹立」、政治局員らが「指導」
  • 第8期第24回政治局会議(12月27日。金正恩は欠席、趙勇元が指導の模様):「分科別研究及び協議会でまとめられた意見を検討し、決定書草案を修正・補足して総会に提出することを決定」
  • 国家予算審議組:「2024年度国家予算執行状況と2025年度国家予算案を審議した状況を検討し、全員会議に報告」を決定→全員会議において、「最高人民会議第14期第12回会議に提出することを承認」
  • 全員会議「決定書」採択(3件):①「第8回党大会が示した5カ年計画の2025年度課題を貫徹することについて」、②「新たな地方発展戦略実行を強力に推し進めて国家の全面的興隆を早めることについて」、③「国の教育土台を強化するための一連の措置を取ることについて」
  • 金正恩会議総括:「来年はわが党が創立80周年を迎える意義深い年であると同時に、第8期党中央委員会が自分の活動を時代と人民の前で総括する年」とした上で、「第9回党大会を勝利者の大会、栄光の大会として堂々と迎えようと熱烈に呼び掛けた」

 第一印象としては、今次全員会議の最大の主眼は、第3議題において、金正恩の野心的な地方発展政策を党の正式な方針として改めて確認させたことであろう。逆に言えば、それだけ、同政策には、各層に潜在的な抵抗が根強いということであろう。

 他方、人事の最大の目玉は金徳訓総理の解任だが、党秘書:経済部長に任命されているので、さほどの責任追及とかの結果ではないであろう。

 なお、第1議題の金正恩の「結論」は、別途整理したいが、対外関係では、注目の韓国情勢やロシア派兵などへの言及はなく、やや形式的な印象を禁じ得ない。また、内政面でも格別の新味は感じられない。