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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年12月27日 党中央委員会第8期第9回総会拡大会議の開幕を報道

 

 本日の「労働新聞」は、標記会議が12月26日、党中央委員会本部庁舎において開始されたこと及びその初日の状況に関する記事を掲載した。

 昨年末に開催の第6回全員会議と比較した、その概況・特徴は、次のとおりである。

  • 会期:昨年は12月26日~31日。今年も31日までとすれば、会期は6日間となる。
  • 参加者:常務委員会委員、政治局委と候補委員、中央委員会委員と候補委員の参加者に加え、傍聴者として、「党中央委員会部署の幹部、省、中央機関、道級指導的機関、市、郡、重要工場、企業所の責任幹部、今年の農業生産で模範的な市・郡農業経営委員長」をあげている。このうち、下線部は昨年にはなく、今年の農業重視姿勢を反映したものであろう。
  • 金正恩への言及:「会議に参席された」とした上で、「政治局の委任により・・会議を司会された」と報道(第6回会議時と同じ)。
  • 議題:「①2023年度の党および国家政策実行状況の総括と2024年度の闘争方向、②2023年度の国家予算執行状況と2024年度の国家予算案、③現時期の党の指導的機能を強化するための一連の問題など、6の主要議案」と報道(丸括弧数字は筆者付記)。具体的言及のなかった残り3議題は、これまでに同会議への上程が予告されている偵察衛星打ち上げ計画、農業機械開発製造計画及び恒例の組織問題(人事)の公算が大。③の「党の指導的機能強化」の具体的内容が注目される。
  • 第1議題審議状況:金正恩が「2023年度の党および国家政策の実行状況に対する報告」を実施(内容については後述)。当初議題に含まれていた「24年度の闘争方向」に言及されていないのは、単なる省略か、あるいは、それについては別途討議の予定かは判然としない。後者、すなわち、まず今年の総括をしっかり踏まえた上で来年の課題を討議という可能性もありえよう。

   金正恩の「報告」に続き、「各部門の指導幹部の討論および書面討論があった」とされる。討論参加者の氏名は記事中にはないが、添付写真には、金徳訓総理、崔竜海常任委員長、趙勇元組織秘書、強純男国防相ともう一人(顔に見覚えあるが特定できず。副総理だったような)の5人が演説している写真が含まれているので、この5人が討論を行ったのであろう。

  • 金正恩「報告」の主な内容:「人民経済全般の発展指標を詳細に紹介し、科学、教育、保健医療、スポーツなど文化部門で達成された自負するに値する成果に言及」するとともに「党建設と国家主権活動、政治、国防、外交分野でもたらされた新しい変化と進展について評価」した上で、「2023年を国力向上において、国威宣揚において共和国の栄光に輝く発展道程に大きな足跡を刻んだ名実共に偉大な転換の年、偉大な変革の年」と自賛。同時に「今年、党および国家政策の実行で発露した一連の偏向とその原因、教訓を発展的観点から深く分析、総括」。

 同記事は、最後に「会議は継続される」としており、全般的評価を示すのは尚早であるが、以上の報道を見る限りでは、今年の成果については、概して肯定的な評価がなされていると思われる。

 また、金正恩の「存在感」については、昨年の第6回会議の際は、同人が第1議題に関し、初日から3日目まで、22年の総括と「23年度に達成すべき重点目標と実行方途」をまとめて報告した上で、討論に入っており、それに比すると、今年の金正恩の冒頭「報告」は、相当簡略化されたといえる。本年6月開催の第8回会議に際して、「司会」の表現及び「報告」をはじめとする発言に関する報道がなかったことに比すれば、旧に復したとも言えるが、全体として見ると、従前よりはやや薄められた印象を否めない。今次会議は、衆知を集めるとの側面が一層強調される傾向で運営されるのではないだろうか。