rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年6月14日 社説「全国が互いに助け為にする我々の国風をより高く発揚させよう」

 

 標記社説の北朝鮮が置かれている状況に対する認識は、非常に厳しいもので、「今日、我々は、類例のない暗酷な挑戦と難関に打ち勝ち・・」とか「今、すべてのものが不足する中で、困難な闘争をしているが・・」といった表現が繰り返されている。

 社説は、そのような苦境を打開する鍵が、「互いに助け合う国風」にあるとし、その一層の発揮を訴え、そのために次のような点を訴えている。

 まず、なによりも、それを金正恩に対する忠誠と表裏一体のものとすることである。「今日、(互いに助け合うという)美徳、美風を高く発揮することは、単純に道徳と良心に関する問題である前に、敬愛する総秘書同志を奉じる姿勢と立場に関する問題である」と主張する。

 次に、「同志と集団のために献身することに人生の生きがいを求める集団主義的人生観」を持つことである。すなわち、「個人の利益より集団の利益をより貴重にみなし、社会と集団のため限りなく献身」することを訴えている。

 また、「戦後復旧建設時期と千里馬大高潮時期の人間の精神道徳的風貌を積極的に学び、実践に具現していく」ことや「個人主義的生活風潮を徹底して反対排撃」することも訴えているが、これらは、前項の具体的に言い換えたものといえよう。なお、後者に関しては、「我々の前進を阻害する単位特殊化と本位主義を根こそぎにし、すべての事業を国家的利益に徹底して志向服従させることを鉄則」とするよう求めている。

 このほか、「全党が人民の中に入り、彼らと苦楽を共にする」ことや党組織がこの運動を積極的に推進することなどもあげている。

 更に、本日の「労働新聞」は、同社説に加え、「信念高く行かん、山岳も激流も超えて革命の新たな勝利へと!」との共通題目の下、いくつかの記事を掲載している。

 このうち、「偉大な党が我々を嚮導しているために」と題する政論は、「敬愛する総秘書同志が我々を導かれているがために」我々は苦境においても勝利し続けているということを主張するものであるが、その中では、やはり、「互いに助け導く高尚な美徳と美風の花園が満開になるようにし、わが社会の本態である集団主義の威力が日に日により高く発揚されるようにしよう」との呼び掛けがなされている。

 また、「試練の中で我々は強くなっている」と題する評論は、「あい路と難関は依然として我々の前途を塞ぎ、予想外の挑戦も少なくないが、試練の中で我々は、日々強くなっている」と主張する。そして、その理由については、「果たして何をもって我が人民は、いかなる試練も突破していく強者の生をそのように粘り強く続けているのだろうか。敬愛する総秘書同志が我々を導かれるがために!」と前掲政論と同じ表現を用いて説明している。また、「困難であるほど互いに助け導きあう主体朝鮮の美しい国風をよりはっきりと花咲かせよう」とも訴えている。

 要するに、上掲の社説及び記事は、いずれも、北朝鮮は現在極めて困難な状況にあるが、人民が金正恩の指導に忠実に従い、互いに助け合って団結していけば、勝利できるということ、換言すると、そのような定式に疑念をもったり私利私欲を追及したりすれば、敗北を免れないということを主張するものといえよう。

 党中央委員会の全員会議が予定日を超えて未開催な中で、このような主張が繰り返されていることの背景に何があるのか、具体的に知る由もないが、苦渋に満ちたものであることは間違いないであろう。