rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

11月28日 社説「全党、全民が苦楽を共にして力強く前進しよう」

 

 標記社説は、自画自賛に満ちたものであるが、逆にそれだけに北朝鮮指導部の基本的な現状認識及び当面の方針などを端的に示していると思われるので、その骨子を紹介したい。

 まず、現状認識については、今年を回顧して「超緊張、超強度の非常局面が連続して重なり、忘れることができない事変が充満した2020年」とした上で、そのような中でも北朝鮮の体制が動揺せず確固としていることを「四季(を通じて)青い松の木の気象が雪の中で際立つように、国家の無尽強力な底力、発展潜在力は最悪の試練期にはっきりと誇示される」、「重畳する困難に打ち勝つための今年の艱苦の闘争の中で我が党と人民はより強固な団結を成し遂げた」などと自賛している。

 また、その要因については、「今年が災難と災害の年としてではなく闘争の年、前進の年、団結の年として刻まれているのは、敬愛する最高領導者金正恩同志の老熟した領導の輝かしい結実である」として、金正恩の指導を称賛している。

 確かに、国際的なコロナ感染症蔓延に対する徹底的な対応方針、自然災害復旧のための「首都師団」の編成・派遣や人民軍部隊の投入、そして「80日戦闘」の開始などの金正恩の対応は、その結果に対する効率性・合理性などの評価はともかくとして、国内の人心収攬・士気高揚という面では、多面的な効果をあげるものであったといえよう。要するに、金正恩は、物質的にはさほどの成果を収めることができなかった割には、心理的には不満感よりも成就感を抱かしめることができているのではないかと考えられる。

 そして、そのような中での課題としては、「すべての人民が国家と困難を共にし、国事に一身を捧げる我々の誇らしい国風をより輝かしていかなければならない」として、「誰もが国があってこそ自分の家庭の幸福も、自身の未来も担保されるとの観点」を持つことを求めている。このような主張は、北朝鮮の基本的な課題が人々に公共心を抱かせること、それへの献身の精神を抱かせることであることを物語っていると考えられる。

 もちろん、当面の課題として挙げられるのは、「80日戦闘を勝利のうちに結束するための総進軍により大きな拍車を加え(る)」ことであり、そのために党組織が指導的役割を充分に発揮することを求めている。

 以上、特段新味のない内容ではあるが、それだけに、少なくとも来年の党大会までは、このような考え方を基調に運営されていくのではないかと考えられる。