rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年6月19日 党中央委第8期第3回全員会議が閉幕

 

 本日の「労働新聞」は、標記会議が18日、4日間の日程を終了し閉幕したことを報じる記事を掲載した。同記事による4日目(18日)の会議開催状況は、次のとおりである。

 まず、第7番目の議題として、「党中央指導機関メンバーの2021年上半年度の党組織思想生活状況に対する総括」が行われた。なお、初日の議題設定に関する報道では、同議題については言及されていなかった。

 ここでは、まず「党中央指導機関メンバーの上半年度党組織生活状況に関する資料が通報」され、「中央機関メンバー」は、「すべての党員と人民の期待に沿えなかった自責感を抱き、自らの党生活状況を全面的に深刻に反省した」という。

 また、これを踏まえて、金正恩が「指導機関メンバーの事業と生活において深刻な問題が発露されていることについて、いちいち指摘」した上で、指導機関メンバーに対し、今次会議を契機に「党大会が高く掲げた以民為天、一心団結、自力更生の理念を改めて深く刻み、一層覚醒奮発」すること、とりわけ、「党中央の決定を徹底して接受し無条件貫徹」することや「人民の利益に抵触することは行わないとの決心」を持つことなどを「懇ろに訴えた」とされる。

 次に、第8番目の議題として、「組織問題」が討議され、政治局委員・同候補委員及び中央委員・同候補委員の召喚(解任)と補選が行われたほか、「国家機関幹部を解任及び任命した」ことも伝えられた。

 このうち具体的に判明しているのは、「全員会議公報」で公表された、太形哲(最高人民会議常務委員会副委員長)の政治局委員、禹相哲(中央検察所長)の同候補委員への補選だけである(氏名音訳)。

 このうち、太副委員長(党大会で政治局候補委員に選出)の政治局委員への昇格は、常任委員会の機能、すなわち法制分野への重視を示すものとも考えられるし、うがって言うと、同委委員長である崔竜海(党政治局常務委員)への牽制的な意味合いがあるのかもしれない。また、禹所長については、中央検察所長の政治局メンバー入りが近年では異例であること、同人が党大会で不正腐敗根絶などに関する「報告」を行ったことなどを勘案すると、検察機関の権威を高めることによって、幹部の不正腐敗や「単位特殊化・本位主義」などに対する取り締まり機能の強化を目指したものと考えられる。

 なお、一部で予想された第1秘書の選出に関する報道はなかった。やはり、同職は、金正恩の「執務不能」など非常時に対応するために設けられたものであり、当面、誰かを選出するということは想定されていないと考えるべきであろう。

 会議では、最後に金正恩が「結び」を行い、会議参加者の労をねぎらうとともに、「今後、いかなる暗酷な試練が立ちふさがっても、秋毫の変心もなく偉大な首領様と偉大な将軍様の革命思想と偉業に最後まで忠実であることを党中央委員会を代表して厳粛に宣誓」して会議を締めくくったとされる。

 4日目会議状況でのサプライズは、当初示されていなかった第7議題であり、このようなことが中央委員会の全員会議で行われたというには、少なくとも近年には例にないことで、その狙いは、いうまでもなく幹部の引き締めであろう。ある意味で、これが今次会議最大の特徴といえるかもしれない。

 そして、今次会議を通じた全般的狙いも、やはり中央委員会メンバーをはじめとした幹部の動揺防止(金正恩ないしその路線・政策に対する信認の確保)及び督励(党決定・党中央の指示などの無条件完遂に向けた献身的取り組み)にあったと考えられる。

 また、そのような文脈で、3日目の第4議題(対外政策)設定の意義を改めて検討すると、国内(特に会議参加者)に向けて、金正恩が対外環境についても綿密に分析しており、今後とも情勢に即して機動的・主導的に対応するとの姿勢をアピールすることに最大の狙いがあったのではないかとの評価が可能であろう。他の議題については、それぞれ担当部門の責任者からの「報告」があり、それを金正恩が講評するという形が基本であったのに対し、同議題に関しては、最初から金正恩が自ら情勢分析などを行っていることは、そのような狙いを示唆しているのではないだろうか。

 その背景には、国内的に、金正恩の対外政策に対しての不満なり懐疑(例えば、対韓も含め、もう少し柔軟に対応して経済支援獲得とか制裁緩和を実現するべきではないかなどの意見)があったのではないかと考えられる(そうした「内部情報」を伝える報道もある。そうした報道に余り頼るのは危険だが)。こうした見方に立つならば、同会議のこの議題に関する報道表現から、過度に対外的なメッセージを読み取ろうとすることは、余り建設的ではないということになろう。

 要するに、金正恩がそういった国内のもろもろの不満・懐疑に対して、文字通りなだめたりすかしたりして、結束の維持・強化を図ったのが今回の全員会議であったというのが、とりあえずの評価である。