rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

6月10日 社説「党中央委員会第7期第13次政治局会議の決定を徹底して貫徹しよう」

 

 標記社説は、7日に開催の政治局会議の意義について、「自力富強、自力繁栄の旗幟高く、国の経済発展と人民生活向上において転換的局面を切り開き、社会主義強国建設においてより大きな勝利を成し遂げていこうとの我が党の確固不動たる意志を闡明した歴史的会議である」とした上で、その決定貫徹に向け、3つの課題を掲げている。

 一つ目は、「国の化学工業を展望性を持って発展させていく」ことである。ここでは、同部門に注力べき理由として、「化学工業を決定的に押し立ててこそ、いかなる外的要因にも関係なく経済発展と人民生活向上を成し遂げることができる」ことをあげている。したがって、「人民経済のすべての部門、すべての単位が化学工業の発展は、まさに自分の部門、自分の単位の発展であるとの確固たる観念を持って、化学工業部門を積極的に助け支援しなければならない」と訴える。その訴えは、とりわけ「金属、石炭、電力工業部門をはじめとした関連部門」に向けられたものであろう。

 二つ目は、「首都市民の生活保障事業に大きな力を注ぐ」ことである。その理由として、平壌が「革命の首都であり、国の顔である」ことを指摘し、「平壌市を雄大壮麗で美しく一新するのみならず、首都市民たちの生活向上で画期的転換をもたらしてこそ、それが燎原の火のごとく国中に燃え広がり、全国の面貌が変り、人民生活向上にも大きな前進が成し遂げられることになる」としている。ここからは、特段の問題が生じていてそれを解決するというよりは、模範を創造しようとの意図がうかがえる。ただし、それが真に同問題が適された狙いを示していると見ることには、なお留保が必要かもしれない。

 三つめは、「各級党組織と幹部の役割を高めること」である。定番的な訴えであるが、そこでの「今日、党政策に対して言葉でだけ念じつつ、その執行のための事業をえり好み(?)式に、要領主義的に行い、党政策が執行されなくてもそれまで、自分の単位が座り込んで立ち上がらなくても束手無策な党組織は事実上、生きている党組織とはいえない」との批判は、逆に現状を示唆したものと考えられる。

 同社説を通じて浮き彫りにされたことは、先の政治局会議、とりわけ「化学工業」振興方針の背景に「自力更生」路線の徹底という狙いが存在したことである。すなわち、石炭という国産可能な原料に立脚した化学工業体系を創設し、それを国内経済の基礎にしようとの構想である。化学工業部門を他の産業部門に優先することを明示するなどして、改めて同構想の徹底を図ったのが同会議であったと考えられる。

 同会議については、金与正「談話」発表を契機に対韓強硬姿勢を喧伝する中で開催されたにもかかわらず、それへの言及がなかったことがやや不可解なものとして指摘されているが、「自力更生」路線の徹底という趣旨において、韓国からの経済支援への期待払拭という対韓動向と通底するものであったと言うことができるのかもしれない。(なお、本日の対韓動向については別項で論じる予定)