rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

6月8日 党中央委第7期第13次政治局会議を開催

 

 標記会議が7日に開催されたとの報道。政治局会議の開催は、4月以来、2か月振りである。2016年5月の党大会以来約4年間で13回目とすると、今年上半期は、2月末の拡大会議以来3回開催されており、かなりの高頻度といえよう。

 また、こうして第〇次というのを明記するのも近年の政治局会議に関しては異例のことである(未確認だが第7期になってから始めてではないだろうか?)。余り頻繁なので、決定事項等を論じるとき何時の会議のことか分かりにくくなるのを防ぐためではないだろうか。

 金正恩は、会議を「司会した」とされており、これも前回と同じ、ちなみに、2月の拡大会議では「指導した」とされている。違いがあるのであろうが、判然としない。議題は、4つであった。

 第一議題は、「国の化学工業を展望性を持って発展させるために提起される当面のいくつかの問題について」である。そこでは、まず、金正恩が「化学工業全般の主体化、現代化を実現するための大胆に展開していく構想と意志を表明」したのに続き、「内閣総理が炭素ハナ化学工業創設の科学技術的担保と経済的効果性を再検討した科学グルッパ(グループの意)の事業状況と化学工業部門の現実態についての報告」を行い、「炭素ハナ化学工業創設を促進し終えるための意見を聴取し、化学工業発展の新活路を開くための問題を真摯に協議した」とされる。

 その上で、金正恩が「化学工業を擁立するための当面課題を提示」した。その骨子は、①肥料生産能力の増大、とりわけ、カリ肥料工業を創設するための科学技術的問題を至急解決すること、②新たな原料に依拠した化学工業分野の開拓、③化学工業の部門構造の完備と現代的改造、④エネルギー・労力・資源節約型、技術集約型、開発創造型の多方面的生産体系の具備、⑤炭素ハナ化学工業に使用される触媒開発の促進、⑥化学工業部門の人材力量の整備、である。

 この進め方を見ての印象としては、化学工業の立て直し、とりわけ「炭素ハナ化学工業」(これが具体的に何を指すのかは不詳。韓国報道では、石炭を原料とした化学工業とされている)の振興について、金正恩は、やる気まんまんなのだが、独断専行・上からの押し付けになるのを敢えて防ぐために、総理直轄の科学者チームを結成・諮問して肯定的結論を示させ、更に、出席者からも「真摯」に意見を出させた上で、持論(当面の課題)をとうとうと述べたてたのではないだろうか。

 第二議題は、「首都市民の生活保障で提起される当面の問題」であり、金正恩が「至急解決すべき問題を具体的に指摘しつつ、住宅建設をはじめとする人民生活保障と関連した国家的な対策を強く立てることについて強調」し、それら問題を「解決するための重要問題が討議された」とされる。具体的な決定内容が判然としないが、何か緊急の問題が発生しているのか、背景が注目される。

 第三議題では、「現行党事業において提起される一連の規約上の問題を一部修正し、党規約改定案に反映することについての意見を審議批准した」とされるが、これも、その具体的な内容はまったく明らかにされていない。また、この表現からすると、党規約を改定したのではなく、「改訂案」を変更したと読めるが、それがどこに提出することを想定したものかも判然としない。既に党大会の準備を進めているのであろうか。

 第四議題は、「組織問題(人事案件)」で、政治局候補委員に金英喚(平壌市党委員長)を選出したほか、中央委員に6人を、候補委員に10人を補選した。ここで注目されるのは、軍人の大量昇格である。特に先月の中央軍事委員会で上将・中将に昇格させられたのと同じ人名が中央委員昇格者中に2人、候補委員昇格者中に5人含まれており、このほか中央委員及び候補委員中に、少なくともそれぞれ1人ずつ軍人と目される人物が含まれている。要するに16人の昇格者中、軍人と思しき者が9人含まれていることになる。これは、軍に対する格別の配慮としかいいようがなく、中央軍事委での将官級大量昇格決定とあわせ、その背景が注目される。

 なお、最近注目の金与正については、同会議において特段の人事措置が講じられたとの報道はなく、席次についても報道写真を見る限り、金正恩から見て円卓左側の11番目あたりに着席しており(隣の上座に政治局候補委員の趙勇元組織指導部第一副部長が着席。着席者は全体で30人前後)、政治局候補委員としての序列にとどまっているように見える。

 別項で紹介したとおり、同女の「談話」については、各種集会の冒頭で朗読されるなど特別扱いされているが、今次会議の状況などを勘案すると、直ちに「ナンバー2」の地位を公然化するような段階には至っていないと考えられる。彼女の立場については、改めて検討したい。