rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

6月8日 金与正談話への「反響」が継続

 

 今日の「労働新聞」紙上でも、標記関連動向についての報道が昨日とほぼ同様のレベルで行われた。

 各層からの投稿記事は、「破局的事態の張本人どもは最悪の代価を手酷く支払うであろう 朝鮮労働党中央委員会第一副部長の談話に接した各界の反響」との共通タイトルの下、5件が掲載されている。執筆者は、鉄道相、中央階級教養館副館長、社会科学院法律研究所所長、龍川郡長山協同農場管理委員長、高麗成均館講座長である。また、同じタイトルで平壌機関車隊と愛国編織物工場の職場での集会の報道写真が掲載されている。

 また、「厳しい鉄槌で対決狂信者どもの無分別な盲動を断固として粉砕しよう」との見出しで、7日に「労働階級と職業同盟員たちの抗議群衆集会」が開城市文化会館前広場で開催されたことが報じられている。同集会には、職業総同盟委員長が出席し、金与正談話を「朗読」したのに続き、「討論」が行われたという。そこでの主張は、もちろん「談話」の趣旨に沿ったものだが、やはり「更に我慢ならないのは、・・・南朝鮮当局者どもの低能児的な醜態であるとして、彼らを峻烈に断罪した」ことが強調されていることが注目される。そして、「彼ら(集会参加者)は、逆賊一味が民族の前に約束した歴史的宣言と合意を破壊しようと繰り広げた醜い盲動を見て、敵はどこまでも敵であるとの哲理を再度、骨に刻んだ」とされる。「敵はやはり敵」というのは、統一戦線部代弁人談話の題目でもあり、この考えを人々に徹底することが今次キャンペーンの狙いなのではないだろうか。

 更に「情勢論解説」として、「同族敵対視政策がもたらした破局的後禍」と題する評論が掲載された。そこでも、「現南朝鮮当局が口では『対話』と『南北善隣関係』などを騒ぎ立てているが、見られるとおり、それは外と内が異なり・・彼らが繰り返した約束とはすべて偽善であり、欺瞞術策である」「内に対決の黒い心を抱くこれらの者が話のたびに『信頼』だとか『対話』だとか言うのは実に嫌悪に耐えない」など、文政権の対北朝鮮政策の「欺瞞」性を強調している。

 なお、本日報道された党政治局会議(7日開催)に関しては、ビラ散布問題をはじめ南北関係についての論及はまったく報じられていない。そのことも、現時点で対韓政策の基調を変化させる意図はないこと、すなわち、前述のような宣伝活動が主として国内向けであることをうかがわせるものといえるのではないだろうか。

 また、問題がそもそも軍事分界線に絡むものであるにもかかわらず、各界の「反響」を伝える中で軍関係の動向がなんら報じられていないことも、今後、南北間の緊張を軍事的行動などの形で展開させていく可能性の低いことを示唆していると考える。