rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

4月22日 論説「自力更生は我が党の一貫した政治路線」

 

 本日の「労働新聞」には、「自主、自力の旗幟を高く掲げ、今日の正面突破戦で輝かしい勝利を勝ち取ろう」との共通タイトルの下、標記論説及び各地の取組みを紹介する6件の記事が掲載されている。

 このうち、標記論説は、冒頭、「自力更生」を朝鮮労働党が一貫して堅持してきた路線とした上で、「我が革命発展において最も重要で鍵となる時期に召集された党中央委員会第7期第4回全員会議において、自力更生の旗幟高く社会主義強国を建設することが我が党の確固不動たる政治路線であることを再闡明した」ことを強調し、「去る1年間は大変に強度の高い闘争と果敢な前進の連続であった」などと述べている。

 なお、中央委第4回会議は、昨年4月10日、「社会主義建設において自力更生の旗幟を高く掲げていくことについて」などを議題として開催されたもので、金正恩が「経済強国建設が主たる政治的課題として提起されている今日、自力更生を繁栄の宝剣として堅持し、全党、全国、全民が総突撃戦、総決死戦を果敢に展開することによって社会主義建設の一大高揚期を切り開こうというのが党中央委員会第7期第4回会議の基本精神であると強調」したとされる。

 そして、その直後の4月18日、「自力更生を繁栄の宝剣として堅持し社会主義建設の戦区ごとに一大高揚を起こすための江原道決起大会」が開催(元山市)され、更に、4月21日には、江原道決起大会のアピールを受けた道・市の決起大会が平安南道咸鏡北道咸鏡南道、両江道、羅先市などで開催されたことが報じられている。

 したがって、標記論説及び関連の記事は、第4回会議の「自力更生」路線の正当性を改めて主張するとともに各生産現場などでのそのための模範的な取組みを紹介・推奨するものといえよう。

 論説に戻ると、前述部分に続けて、そうした苦労の結果、「我が革命の針路は自力富強、自力繁栄の一路だけであり、自力更生路線の徹底した貫徹によってのみ社会主義強国の理想を実現することができる」ことが証明されたと主張し、「自力更生路線」の特徴として次の2点をあげている。

 その第一は、「我が国家と人民の自主的尊厳をしっかりと守るための最も正当な路線」である。「国と人民において自主的尊厳は生命であり、自分の力によってのみ国家の安全をしっかりと保衛し、持続的発展を推動することができる」という。

 第二は、「新たな発展と繁栄の局面を開き、社会主義建設を加速化していくようにする最も威力ある路線」である。「瞬間の華麗な変身や一時的な富興ではなく、持続的な発展と繁栄のしっかりとした土台を築く」ものであるという。

 第一と第二の主張には重複も感じられるが、いずれにせよ、自力更生によってこそ、国家の尊厳と自主性の維持、持続的発展の可能性が確実に担保されるとの認識を示すものといえよう。

 次に、各地の事例紹介の記事に移ると、最初は、「化学工業基地を湧き立たせる力強い思想攻勢」と題し、2・8ビナロン連合企業所党委員会が「絶世偉人たちの不滅の領導業績を通じた教養事業を実践と結び付けて」行ったことなどが紹介されている。同企業所の場合、過去に金日成金正日らの現地指導がなされているため、そういった「領導業績」を軸に思想教育活動を行うことが効果的と考えられたのであろう。

 次は、軽工業相傘下の紡績工業部門・工場の取組みで、「300台近くの紡織設備補修 競争熱高潮」と題し、「自体の潜在力を総発動して布生産能力をより造成するための闘争」を各工場の「競争」方式で展開して「ことなどを紹介している。

 3番目、4番目は発電関係で、前者は「西頭水発電所」(音訳)で「直面する隘路と難関を自力更生精神と科学技術の力で突破して発電設備の技術改造を促進している」ことを紹介し、後者は、「発電設備の効率を高めるための大衆的技術革新運動を活発に展開している」と題して、長津江発電所の写真を掲げている。

 このほか、南浦市が「10余個の対象建設を本格的に推進」している状況や「非常な覚悟と実践力が生んだ結実」と題して金策工業総合大学において「地熱冷暖房体系を確立」した事例などを紹介している。

 更に、同日には、上掲共通タイトルは付されていないが、「何物とも替えることができない我々の尊厳」と題する評論も掲載されている。

 同評論は、「我々において経済建設に有利な対外的環境が切実に必要であることは事実であるが、決して華麗な変身を望みこれまで命のように守ってきた尊厳を売ることはできない」と主張する。その理由は、「今日、世界では力の論理が支配し、民族利己主義が蔓延している。世界の至る所で戦争の惨禍が終わらず、諸国の人民が生きる道を求めて彷徨している暗酷たる現実」に照らせば、「自力更生、持久自足こそが国の自主権と人民の安全を担保するための最善の方略である」からである。そして、「我々には阿諛と屈従によって辛うじて命脈を保つ他国にはない偉大な力であり尊厳である自力更生の革命精神がある」と自賛している。

 同評論のこのような主張は、「自力更生」を「華麗な変身」と対置するとともに、「尊厳」及び「安全」の「担保」とみなす点で、冒頭に紹介した論説の趣旨と完全に一致し、それを一層明確に述べたものといえる。

 これら一連の論説・記事などで注目されるのは、まず、昨年4月の中央委第4回会議が前述のような意味での「自力更生」路線の新たな発起とされていることである。これは、やはり、その直前のハノイでの米朝首脳会談が物別れに終わったという結果を踏まえつつ、その時期に、「華麗な変身」の望みは失っても「阿諛・屈従」(=大幅な対米譲歩)はしない、それよりは「尊厳」を守るため「自力更生」で持久する、との選択を改めて確認したことを示すものと考えることができよう。

 もう一つの注目点は、「自力更生」路線の採用は、そのような思想的・精神的価値観が大きく作用してなされたとみられる一方、その実践・具体化においては、思想的発奮のみならず、科学技術の活用が重視されているということである。昨今の人材重視などの強調も、そのような必要性に基づくものであろう。

 付言するなら、昨年12月の中央委第5回会議における「正面突破戦」の採択は、そのような既定路線の延長線上において、それを改めて加速するものであったと考えられる。