rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年7月19日 論説「以民為天、一心団結、自力更生をより高く掲げていこう」

 

 標記論説は、月刊の党機関誌「勤労者」との共同論説として掲載されたもので、「1」「2」「3」の3部構成となっている。その概要は、「1」で「以民為天、一心団結、自力更生」がこれまでの朝鮮革命の経験に照らして有効・妥当なものであったことを、「2」で今日の情勢下でそれを実践することの妥当性・必要性が更に高まっていることを主張した上で、「3」でその実践において特に力を注ぐべき課題を提示するものとなっている。

 以下、各部分のハイライトをかいつまんで引用する。「1」では、「我が革命の全歴史は、以民為天、一心団結、自力更生の旗幟高く、人民の自主的権利と根本利益を固く守護してきた尊厳高い歴史である」と宣言する。ここで強調されるのは、「自主」と「尊厳」である。そして、「波乱多き朝鮮革命史は、我が党の以民為天、一心団結、自力更生理念を徹底して具現するところにすべての勝利と栄光があるという真理を実践で力強く確証した」と結論付ける。

 次に「2」では、「以民為天、一心団結、自力更生は、我々が生きていくことができる唯一無二の生命線である」ことを主張する。その理由の一つは、「国家の存立と発展の基礎は、団結した人民であり、人民が支持する社会主義は絶対に崩れない」ことにある。また、同路線は「決して今の難局を打開するためだけではない。今日だけでなく、遠い将来を展望しても民族自存の方式は、依然として以民為天、一心団結、自力更生にある。たとえ今後(対外的)交流と協力空間が広がり有利な条件と環境が与えられたとしても団結力が弱く自分の力に対する信頼がなければ必然的に他人に束縛され屈従させられるしかない」とも主張する。そして、この路線こそが「主体的力、内的動力をくまなく強化し、社会主義前進を加速化する根本要因である」として、その堅持を呼びかける。

 最後の「3」では、「以民為天、一心団結、自力更生は行動のスローガン、実践のスローガンである」として、それに基づく具体的課題を提示する。第一にあげられるのは、「我が党を真の人民の従僕党として建設すること」である。三つのスローガンの中でもとりわけ「以民為天」に重点を置いたものといえよう。第二の課題は、「全社会に互いに助け導く集団主義気風を徹底して確立すること」である。ここでは、個人や個別企業の利益よりも国家・全体の利益を優先することなどを強調する。それがまさに「一心団結」実現の鍵ということであろうか。第三は、「経済建設と人民生活において発展志向的な顕著な成果を収めること」である。その実現は困難なように見えるが、論説は、「党と人民が一つの思想と志で結集した一心団結があり、万難を排して前進していこうとする精神さえ強ければいくらでも国の経済を活性化し人民生活に革命的転換をもたらすことができ(る)」と主張している。

 同論説のテーマとなっている「以民為天、一心団結、自力更生」は、1月の党大会終幕に際し、金正恩が党大会決定のエッセンスとして提起したスローガンである。「労働新聞」が「勤労者」との共同論説を掲載するのは、2020年10月以来(「聯合ニュース」によると、金正恩時代になって以降通算すると7回目)のことであり、それなりに重要性を付与しての主張であると思われるが、なぜこの時期にこれを改めて取り上げたのかは、率直に言って、余り判然としない。