rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年3月22日 評論「農村革命の方途」と地方経済の実情

 

 標記評論は、「我が党が明らかにした農村革命に関する思想を深く体得しよう」とのサブタイトルを付して掲載されたもので、昨年12月開催の党中央委第8期第4回全員会議における金正恩の農村・農業振興提起を受けたものと考えられる。

 評論の掲げる方途の第一は、「社会主義農村建設に対する党の領導を確固として保障すること」である。とりわけ、「思想、技術、文化の3大革命の旗幟高く農業勤労者を農村革命の直接的な担当者、堂々たる主人として打ち立て、熱烈な愛国者として育てること」を「農村党事業の基本核であり、里党委員会に提起された最も重要な任務」であると強調している。

 方途の第二は、「農業に対する国家的投資を増やすこと」である。その理由としては、「今日、農業生産を発展させる問題は国家の存亡と革命の前進を左右する深刻な政治的問題であり、人民が最も解決を待つ切実な課題」であることを挙げる。そして、「重要農事の時期に(農村支援のために)力量と手段を機動性を持って動員することを定例化、義務化」するよう求めている。

 方途の第三は、「農村経理(経営の意)に対する指導と管理を改善すること」であり、既存の農業指導機関に関し、「農業生産全般に対する統一的で計画的な指導と管理を改善できるよう不合理な機構と秩序を正しつつ事業体系を一層完備」するよう求めている。また、そのための「最も切迫した問題は幹部の虚風(はったりの意か)をなくすことである」とも主張しており、昨年の年間計画策定に際し、農業部門の目標が過大で非現実的と批判されたことが想起される。そうした傾向は、一度や二度の批判では是正されないようである。

 また、本日の「労働新聞」は、これとは別に、「地方経済を不断に活性化しよう」との共通タイトルの下、いくつかの記事を掲載しているが、その中の「地域の潜在力発動において見習うべき働きぶり」と題する記事は、「近年、端川市が地方経済発展のための事業で成果を収めている」として、同市の実例を紹介している。

 そこで掲げられた第一の成果は、海に面した特性を活かして塩の生産を本格化したことで、「自体で生産した塩で基礎食品(味噌、醤油など)生産に必要な原料を十分に保障できるようになり、洗濯石鹸を作るのに用いられる苛性ソーダ問題も解決できるようになった」ことである。

 第二の成果は、「昨年打ち捨てられていた数町歩の沼を改造して肥えた田に変貌させ、そこで生産される穀物で市内の子供たちに対する間食供給を正常化できる担保を整えた」ことである。

 評論は、こうした取り組みを「人民が実生活を通じて社会主義制度の有難さを時々刻々感じるようにするもの」と称賛し、「大衆の精神力発動問題も、地方経済の土台強化と発展問題も、実相は人民の生活問題と密接に関連している」と主張している。

 ここでも、昨日の本ブログで論じた「社会主義の有難さ実感」が出てくるが、それはさておき、以上のような記事内容からは、北朝鮮における「経済建設」ないし「人民生活改善」ということが現実にどのようなレベルにおいて取り組まれているのかということを垣間見ることができる。

 すなわち、味噌、醤油や洗濯石鹸の原料である塩の入手自体に汲々とし、また、子供たちの間食(菓子類ということか)さえまともに供給できていなかったということである。ただ、それは換言すると、食糧の絶対的不足が問題になっているのではなく、それを超えた調味料や間食に関心が移っているということでもある。そういったところが地方の人民生活の実情ということであろう。