rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年6月10日 地方経済活性化の方途

 

 8日開催の党中央委員会・道党委員会責任幹部の協議会における金正恩の発言に関し注目されるのは、「国家経済」と「人民生活」が繰り返し並記されて出てくることである。国家経済を発展させることによって、人民生活が安定・向上すると考えるのが自然と思うのだが、彼の(ないし北朝鮮の)発想は、両者は別のもののようである。それでは、人民生活を支えるものは何かといえば、市・郡レベルで、それぞれの自力更生により運営される「地方経済」ということになる。

 本日の「労働新聞」は、そうした「地方経済」活性化の模範事例とみられる三つの記事を掲載している。

 第一は、「建設力量強化のための事業を方法論をもって展開 江原道において」と題する記事で、同道で地方独自の建設事業を推進するための建設力量を強化する方策として、「ここで重視していることは、(人民軍の)建設部隊において服務した除隊軍人を漏れなく掌握し、彼らの革新的役割を強化して全般的な技術技能水準を一段階高める」ことに努めたことを紹介している。

 第二は、「地方原料に徹底して依拠して 咸鏡南道の市、郡において」と題する記事で、「端川市では、自らの原料源泉に依拠して醤油、味噌生産を増やし、質を一層改善」したこと、「虚川郡では、ヒマワリを群衆的に栽培して食用油(の供給)問題を解決して」いること、「海に面している新浦市では、貝醤油生産工場を整備」したことなどを紹介している。

 第三は、「排泄物(廃棄物の意)が宝物に転換する 三池淵市の地方工業工場において」と題する記事で、同市内の飲料工場において、「新たな技術革新案を広く取り入れて、破樹脂瓶を再生利用」していること、ジャガイモ粉末工場において「ジャガイモ選別工程で出る副産水から농마を抽出して食料工業発展に必要な糖原料を生産することのできる突破口を切り開いた」こと、「このほかにも排熱で事務室と公共場所の暖房を保障し多くの電気を節約できるようにした」ことなどを紹介している。また、「(同)市では、再資源化に対する社会的関心が高まるに即して、整然とした遊休資材収集体系を立てる一方、競争熱意を高潮させる事業を方法論をもって実施している」ことも伝えている。

 こうした記事からうかがえる地方経済の活性化に向けた方策は、端的に言えば、非常に涙ぐましいものといわざるをえない(よく言えば、最近はやりのSDGsを極めたものともいえるが)。こうした地方経済に依拠した人民経済の安定・向上というものが(平壌市内住宅建設など中央直轄で進められるものを除けば)結局のところ、どれだけのものであるかは、察するに余りあると言わざるを得ない。