rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

10月8日 「80日戦闘」における各部門の取組み課題

 

 本日の「労働新聞」には、5日の政治局会議で「80日戦闘」の実施が決定されたことを受け、「果敢な連続攻撃戦で勝利から更に大きな勝利を成し遂げていく高い熱意 全党、全国、全民を80日戦闘へと呼ぶ党中央委員会第7期第19回政治局会議の報せに接した各界の反響」との共通題目の下、同「戦闘」への取組み姿勢を示す各部門からの投稿記事が掲載されている。

 これら記事は、「80日戦闘」において、とりわけ、どのような部門の、どのような活動が期待されているのかを反映したものとも考えられる。そのような点に着目して、一連の記事を紹介したい。

 筆頭に掲げられているのは、「首都党組織が総攻撃戦の先頭において」と題する平壌市党委員長の記事であるが、これは具体的内容のない総花的な記述に終始している。

 次に、「科学技術で開拓路を切り開く」と題する国家科学院院長の記事は、当面の取組み課題として「非常防疫事業に積極的に貢献するための科学技術的問題」「肥料問題と原料、燃料の効率的な利用問題、エネルギー節約型鉄生産問題」への取組みをあげ、特に「総力量を集中して・・肥料生産に提起される科学技術的問題を円満に解決」することに努めるとしている。

 これに続くのが、「電力生産土台強化においてより大きな一歩を進める」と題する電力工業相の記事で、「火力発電所に必要な燃料、資材保障に最優先的な力を注ぎ、設備管理、技術管理を行って発電設備整備補強を質的に促進」するとともに「水力発電所において・・設備、構造物保守と管理を責任をもって行い、電力生産を頼もしく担保」するとしている。電力部門は、増産というよりは、現状維持に汲々としている印象を受ける。

 この後、「幹部と党員と勤労者を首領決死擁衛の親衛闘士として育てる事業を主線として、ここに党事業の火力を集中する」として思想教養事業への取組みを強調するのチュンサン郡党委員長の記事、「人民を守る防弾壁になって」と題する平安南道非常防疫機関勤務員の記事、「被害復旧戦闘の一日一日を偉勲創造で輝かさん」と題する216師団省・中央機関連隊旅団長」の記事(同師団は、咸鏡北道の復旧活動に従事中)が続く。

 そして、「経済建設の二本柱を一層しっかりと」と題する記事は、「80日戦闘期間、鉄鋼材生産を増やすための創造闘争、突撃闘争」を行うとする千里馬製鋼連合企業所支配人の記事と「現在進めている重要生産工程確立を80日戦闘期間内に完成し、国内原料に基づき生産正常化の槌音をより高く轟かす」とする興南肥料連合企業所支配人の記事を並列している。

 一連の記事の最後には、「農事結束のための作戦と指揮を迫力を持って」と題して、黄海南道農村経理委員会委員長とヨムジュ郡協同農場経営委員会委員長の投稿を掲載している。同期間における取組み課題として、前者は、「秋収と脱穀を最適期に終わらせ町歩当たりの穀物生産を最大限高める」ことを、後者は、同じく秋収・脱穀を「適期に質的に結束」することに加えて、「分組管理制の中での甫田担当責任制を方法論を持って実施し・・農業勤労者の精神力を最大に爆発させ・・今年の穀物生産目標を必ず占領」することをあげている。

 これら記事を総じて見ると、今次「80日戦闘」については、過去の増産運動に見られたような当初目標の超過達成というよりも、むしろ既存目標の実現に重点が置かれているような印象を受ける。また、部門別にみると、肥料・電力・鉄鋼に重点が置かれているが、そのうち新たな生産工程の建設が見込まれているのは肥料のみで、その他は、設備の補修や原材料確保などが課題になっているようである。

 この背景には、やはり、災害復旧とコロナ防疫活動という二つの喫緊の課題の存在があろう。それらに取り組みつつ経済建設を進めるということが困難であることが改めてうかがわれる。