rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

10月9日 論説「人民大衆と渾然一体を成した不敗の革命的党」

 

 標記論説は、「執権党であるからと言って、党の歴史が長いからと言って、自ずと大衆と血縁的に連結されるものではない」とした上で、「我が党は、人民の絶対的な支持と信頼を受ける真の領導的政治組織である」と自賛し、「革命する党において、人民の支持と信頼より一層価値があり、より大きな力(になるもの)はない。人民という土壌に根を張れない党、民心を失った党は風前の灯に等しい」として、人民からの支持・信任の重要性を強調する。

 そして、北朝鮮における党と人民の関係について、「党と大衆との関係は、領導し領導を受ける関係であると同時に、運命を保護し委託する関係である。人民が党を無限に信頼し奉じるのみならず、運命と未来まで全的にまかせ生死を共にしていく渾然一体の真の姿がある」と主張している。

 更に、そのような党に対する人民の信頼の背景に関し、「党の偉大性はすなわち領導者の偉大性である」としつつ、「敬愛する最高領導者(金正恩)同志の崇高な人民観は我が党政策と党活動の出発点になっている」「敬愛する最高領導者同志の人民に対する滅私服務の意志は、我が党活動の原動力となっている」などとして、結論的には、金正恩の主唱する「滅私服務」の励行を訴えている。

 論説の以上のような主張は、このところ盛んに強調される「人民大衆第一主義」ないし「滅私服務」のスローガンが人民大衆の党に対する支持ないし献身の獲得を目指すものであり、その獲得如何が党の盛衰を左右する死活的な要因となるとの認識に基づくものであることを改めて端的に示したものといえよう。

 話は、やや飛躍するが、このたびの「80日間戦闘」実施についても、昨日の本ブログで指摘したように、従前の「○○日戦闘」の際のような「増産」効果が必ずしも期待できない中で敢えて設定したのは、単純に労働強化を督励する(端的に言えば、「尻を叩く」)というよりは、国中の人々を同運動に巻き込むことにより、党政策(例えば「国家経済発展5カ年戦略」)の遂行程度に対し、第三者的・客観的な立場から評価するのではなく、自らも参画したプロジェクトとして主体的な立場で見るようにするという、視点を転換させることに狙いがあるのではないかとも思われる。

 その結果、同「戦略」の取組み結果に対しては、当初目標を実現できずに終わったという「失政」批判ではなく、むしろ、想定外の困難な状況にもかかわらず自分も含めて皆が一生懸命頑張りこれだけのことをやった、という形で肯定的にとらえることが期待できるのではないだろうか。またそこで問題点が提起されたとしても、自分たちの努力の結果得られた「貴重な教訓」として受け入れられることが可能であろう。

 そうであるとすれば、同「期間」の設定は、「他人には厳しくても自分には甘い」という人心の綺を巧みにとらえた巧妙な施策といわざるをえない。党に対する人民の支持・信任獲得のための苦肉の策といえるのではないだろうか。