rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

9月20日 論説「人民の信頼は幹部の高貴な財富」

 

 標記論説は、「幹部において人民の信頼よりも貴重なものはない」として、その獲得の為に人民に奉仕すべきことを訴えるもので、かねて繰り返されてきた「滅私服務」キャンペーンに属するものである。

 その点では、新味のないものであるが、興味をひかれたのは、「我が党は、主要会議をはじめとした契機ごとに(そうした人民への奉仕という)幹部の役割と責任性を決定的に高めることについて強調している。党中央と思想も息吹も歩みも共にする幹部であるならば、(人民奉仕に向けた)党の決定と指示を重く受け止め徹底して貫徹していかなければならない」との記述である。ここで、「党」ないし「党中央」は、金正恩を指す言葉と考えてまちがいないであろう。そうすると、この文章からは、金正恩が会議において、しばしば幹部に対し「滅私服務」の趣旨とその徹底を訴えていることをうかがうことができよう。

 もう一つの注目点は、「今日、(台風等の)被害地域で力強く展開されている復旧事業は、単純な建設工事や生活復元ではなく、いかなる困難の中でも一片丹心、我が党だけに付き従う党に対する人民の信頼心を守り、党の絶対的権威を保衛するための重大な事業である」との指摘である。この文章は、換言すると、被害復旧をしっかり行い住民の満足を得ることができない場合、その不満が容易に党ないし金正恩に対する信頼感、忠誠心の失墜さらには不満・反発に転化しかねないとの可能性を指摘するものといえよう。

 金正恩は、そうした危機感を抱きつつ、様々な会議を招集し、参加者らに対して自ら「滅私服務」を訴える熱弁をふるっていると考えられるが、現実には、それも「馬耳東風」に終わっているのかもしれない。