rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年6月24日 外務省米国担当局長が談話を発表(6月25日記)

 

 6月24日の朝鮮中央通信は、権正根(音訳)外務省米国担当局長の同日付け談話を報道した。

 同談話は、ブリンケン米国務長官が訪中に際し、「中国が平壌を圧迫できる唯一無二の位置にあると力説し、中国が動かなければ日本、南朝鮮と共に中国が好ましく思わない軍事的措置を取るという脅迫性発言を並べ立てた」ことを非難した上で、「朝鮮半島緊張激化の根源は、・・最も極悪な対朝鮮敵視政策を執拗に実行しながら、朝鮮民主主義人民共和国の主権と安全を重大に侵害した米国にある」と主張するとともに、「米国の増強された軍事的措置と挑発水位の高調」には、「朝鮮民主主義人民共和国の対応性行動措置の規模や範囲もより圧倒的に、攻勢的に拡大するということを厳重に警告」するものである。

 ここまでは、従前の主張の繰り返しであり、敢えて紹介するまでもないところだが、注目されるのは、最後部分の、「米国がわれわれの権益を無視してわれわれの主権を侵害し、われわれに脅威となる行動を中止しない限り、極悪な対朝鮮敵視政策を撤回するための明白な行動措置を取らない限り、朝鮮民主主義人民共和国の正当防衛権行使においてはいかなる自制や調節もあり得ない」との表現である。

 何故、それが注目されるのかというと、北朝鮮の「正当防衛権行使」における「自制や調節」の条件として、米国による北朝鮮に脅威となる行動の「中止」(朝鮮語は멈추다・・止める、停めるとも解釈可能)、あるいは、「極悪な対朝鮮敵視政策」そのものの撤回ではなく「それを撤回するための明白な行動措置」を挙げていることである。

 こうした表現は、米国が「敵視政策」そのものを完全に撤回・転換しなくとも、現在加速している圧迫的行動を停止するなどして、「敵視政策」を転換する「明白な行動」さえ示せば、北朝鮮もこれまで「正当防衛権」の名の下で進めてきた核・ミサイル開発などを(直ちに全廃はしないまでも)「自制・調整」する余地があるというメッセージと解することができよう。

 しかも、そうした内容の談話が、北朝鮮国内では「6・25米帝反対闘争の日」に向けての各種記念行事などが活発に展開されている中で出されたというのも、意味のないことではないといえる。先の外務次官名義の対日談話(5月29日付け本ブログ参照)も同様であるが、最近の北朝鮮の外交姿勢については、そこに込められた微妙なニュアンスを慎重に検討する必要があると考える。