rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年9月9日 政権樹立73周年慶祝閲兵式を実施(9・10加筆修正版)

 

 本日の「労働新聞」は、9月9日午前零時を前後して、平壌金日成広場において、金正恩参席の下、労農赤衛軍、赤い青年近衛隊及び社会安全部所属の社会安全軍などによる「共和国創建73周年慶祝民間及び社会安全武力閲兵式」が実施されたことを報じた。

 同閲兵式の進行で注目されたのは、以下の点。

①冒頭の閲兵部隊に対する検閲を趙勇元(党組織秘書)が行ったこと(同人は、今次行事では、敬礼姿も発声も堂々としており、これまでの金正恩の腰ぎんちゃく的イメージとは異なる一面を垣間見せた)。一方、最近、常務委員に昇格した朴正天は、背広姿で登場、パレード観覧の際は、報道上の序列とは異なり、金正恩の向かって右隣りに立っていた。

国旗掲揚式をはじめ、様々な演出を通じて、国旗の印象付けが図られたこと(共和国創建記念日なので、当然と言えば当然だが)

金正恩が演説を行わなかったこと(李日換党秘書が実施)

④閲兵式終了後に「青年学生の夜会」(広場を埋め尽くすほどの青年学生がダンス。同時に花火打ち上げ)が盛大に行われたこと。祝祭日における「舞踏会」は、すっかり恒例化したようだ。なお、これとは別に、同日には、女性同盟主催の舞踏会や各地での芸術公演なども実施。慶祝気分を盛り上げたようである。

 閲兵部隊の構成を略記すると、平壌市党員師団縦隊(初稿では、昨年、咸鏡道復旧のため臨時編成された首都党員師団と混同していたが、それとは別物であった。訂正する)を先頭に、平壌市、平安北道平安南道黄海北道黄海南道、慈江道、江原道、咸鏡北道咸鏡南道、両江道の各労農赤衛軍縦隊が各道党責任秘書に率いられて続いた後、鉄道省高麗航空局、金策製鉄連合企業所をはじめとする8つの企業所・工場や非常防疫(防護服を着用)、保健省の各縦隊、国家科学院、文化芸術人、体育人、金日成総合大学をはじめとする3大学の縦隊及び赤い青年近衛隊縦隊が行進した。

 次に、社会安全軍縦隊、社会安全軍特別機動隊縦隊(騎馬部隊)と続き、軍用犬を連れた軍犬捜索縦隊が徒歩縦隊のしんがりをつとめた。

 その後、労農赤衛軍機械化縦隊としてオートバイ縦隊(サイドカーに機関銃装着)、トラクター縦隊(旧式の多連装ロケットや対空ミサイルを携帯する兵士積載した車両などをけん引)が登場し、最後は、消防車からなる社会安全軍消防隊縦隊であった。

 閲兵式の構成は、地域別だけではなく、企業、教育・研究機関など社会の各層からなる民兵部隊を登場させることによって、挙国的な防衛体制の建設を誇示するものであったといえよう。このことは、労働新聞がこれを報じる記事の中で、「我が党の全民武装化、全国要塞化方針」に言及していることからもうかがえる。

 こうした民間武力建設の方針は、突然示されたものでではなく、1月の党大会における金正恩が中央委員会事業総括報告の中で、今後の軍事建設方針に関し「国家防衛力をしっかりとかためる上で絶対に疎かにできない重大な事業である全民抗戦準備を完成すること」を訴えたことを反映したものと考えられる。

 文化芸術人や保健省の看護婦らしき集団、あるいは年配の各道責任秘書と言った人々を含めて、民間武力の構成員が一糸乱れぬ気合の入った行進ができるのは、やはり北朝鮮ならではと改めて感心した。