rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年10月9日 論説「敬愛する総秘書同志の絶対的権威は我が党の尊厳であり我が人民の自負心であり栄光である」

 

 標記論説は、冒頭で「首領の権威こそ党の強大性であり、人民の栄光である。人民において偉大な首領を奉じることよりもっと大きい幸運はない」とした上で、「敬愛する金正恩同志は、・・この世で最も高い権威を帯びておられる卓越した首領であられる」として、「首領」としての同人の「権威」がいかなるものかを敷衍して論じたものである。

 まず掲げるのは、「時代と革命の前途をはっきりと明らかにしてくれる傑出した思想理論家としての権威」である。「敬愛する総秘書同志は、精力的な思想理論活動によって、我が革命と人類自主偉業を勝利の一路へと導かれる卓越した思想理論家であられる」と主張している。

 次に、「我が革命と建設を輝かしい勝利の一路へと導かれる傑出した領導者としての権威」をあげている。「敬愛する総秘書同志は、非凡な領導力で革命と建設のすべての分野でめざましい全盛期をもたらした卓越した首領であられる」という。

 三番目には、「人民の運命と生活を温かく面倒見て下さる慈愛深いオボイ(親)としての権威」である。「人民を懐に抱き熱と情で温かく面倒見て下さり、彼らの運命と未来に最後まで責任を負って下さる」としている。

 最後に掲げるのは、「祖国と革命、時代と歴史の前に積み重ねられた不滅の業績により輝く権威」である。ここでは、党建設をはじめとした同人の「業績」を掲げ、「我が共和国は、今日、世界政治の中心において影響力を堂々と行使する尊厳高い強国である」、「最強の国家防衛力を備えたことは、我々の子孫が世間において最も尊厳高く幸福な生活を享有できる頼もしい担保を整えた民族史的な特大事変である」などと主張している。

 論説は、金正恩同志の「権威」を以上のように説明した上で、最後に、「自力で繫栄する社会主義強国を打ち立てるための決定的担保は、敬愛する総秘書同志の権威を決死保衛するところにある」として、そうした金正恩への忠誠を訴える。換言すると、「すべての幹部と党員と勤労者が敬愛する総秘書同志の権威と威信を絶対化し、総秘書同志の思想と領導に絶対忠誠する革命的気風をより高く発揮していくとき、我が国家の強大性、先進性、英雄性はより高く轟(く)」というのである。

 以上のような主張は、金正恩の権威(偉大性)の根拠として、思想理論、政策指導力、人民に対する愛情を主たる柱とし、その「実績」として、党建設、外交、国防建設などを前面に掲げる(経済建設面への言及は抑制的)という北朝鮮の宣伝方針を整理した形で示してくれるものである。

 また、最後の部分は、今後の結果について、良い成果が出れば、当然、金正恩の偉大性のお陰と主張できる一方、それが示せない場合は、人民の「忠誠」が不十分であったためという主張を可能にする論法ともいえる。どっちに転んでも、首領の「権威」に傷がつくことはない。教祖様は偉大だが信者が幸福になれないのは信仰(お布施?)が足りないせい、というカルト集団の主張と同じである。