rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年3月24日 核無人水中攻撃艇試験及び模擬核弾頭搭載巡航ミサイル発射訓練の実施を報道

 

 本日の「労働新聞」は、3月21日から23日の間、金正恩の指導の下、標記試験及び訓練を実施したことを報じる記事を掲載した。同記事の骨子は、次のとおりである。

  • 背景事情:米韓が「事実上の反共和国『占領』訓練を公然とそれも大規模的に危険千万に展開し・・持続的な軍事的挑発に狂奔し情勢を悪化させる展望」のため、「我々をして全軍の全面戦争準備とともに優先的に核武力の質量的強化を必須的に提起」
  • 訓練目的:「(従前とは)別の軍事的攻撃能力の示威により、敵どもに実質的な核危機に対して警告し、自衛的核力量の信頼性を検証するため」
  • 無人水中攻撃艇「ヘイル(津波)」試験

  〇 開発経緯:2012年から開発開始、8党大会で命名以後、50余回の最終段階試験を実施(金正恩は29回直接指導)、党中央委第8期第6回全員会議(2022年12月)で作戦配置決定

  〇 運用概念:「隠密に作戦水域に潜航し、水中爆発で超強力な放射能津波を起こし、敵の艦船集団と主要作戦港を破壊消滅させる」

  〇 試験概要:3月21日、咸鏡南道利原郡海岸から出航後、朝鮮東海に設定された楕円及び8の字型針路を80~150mの深度で59時間12分間潜航し、23日午後、敵の港口を仮想した興元湾水域の目標点に到達し、試験用戦闘部が水中爆発」

  〇 試験結果:「すべての戦術技術的諸元と航行技術的指標が正確に評価され、信頼性と安全性が検証され、致命的な打撃能力を完璧に確証した」

  〇 目的:戦略巡航ミサイル部隊に戦術核攻撃任務遂行手続きと工程を熟練させる

  〇 発射前訓練:「核攻撃命令認証手続きと発射承認体系など技術的・制度的装置の稼働正常性と体系安定性を再検閲、それに伴う戦略巡航ミサイル分隊の行動操法と火力服務動作を反復的に熟練させるための訓練」

  〇 発射訓練:3月22日、咸鏡南道咸興市興南区域から戦略巡航ミサイル「ファサル(矢)1」2基と「ファサル2」2基を発射、朝鮮東海上に設定した楕円及び8の字型飛行軌道をそれぞれ1,500㎞・7,557~7,567秒、1,800㎞・9,118~9,129秒で飛行し目標を命中打撃、超低高度飛行試験と変則的な高度調節及び回避飛行能力を判定。また、各型1発は設定高度600mで空中爆発打撃し、核爆発起爆装置の動作信頼性を再度検証

  ※ 韓国軍は、22日、北朝鮮が同日午前10時15分ころ咸興一帯で巡航ミサイル数発(後に4発と特定)を発射したと発表していた

  • 金正恩発言等:「米国と南朝鮮当局の無分別な軍事的挑発策動が加重されるほど我々は最後までより圧倒的に、より攻勢的に強力に対応する」ことにより、「徹底した戦争抑制力の圧倒的示威により米帝と傀儡どもの選択に絶望を抱かしめ、(朝鮮半島)地域で軍事同盟強化と戦争演習拡大を通じて得るものよりも失うものがより多く、より大きな脅威に直面することになるということを自ら認識させる」、「我が党と共和国政府を代表して敵どもにもう一度、無謀な反共和国戦争演習騒動を中断することを厳重に警告」した

 以上のような軍事活動は、大枠で言えば米韓演習への対抗措置として想定されていたものとも言えるが、「核無人水中攻撃艇」というのは、まったくの「新顔」であり、意表を突くものと言わざるを得ない。ただ、果たしてどの程度実用的な兵器なのかは今後の検討課題であろうが。

 一方、模擬核弾頭搭載の巡航ミサイル発射は、19日に行った模擬核弾頭搭載の弾道ミサイル発射訓練の巡航ミサイル版ということになり、戦術核兵器の実戦化を一層印象つけるものといえよう。

 いずれにせよ、北朝鮮がこうした強力な軍事活動を連続的に実施しているのは、金正恩発言に示されているとおりの狙いによるものであろうが、皮肉なことは、米韓側が最近、従前以上の規模の合同軍事演習を実施して「拡大核抑止」の実効性強化を誇示しているのも、それとまったく同じ発想に基づくものであることである。米韓の「自由の盾」演習は23日で終了したそうだが、今後、大規模な合同上陸演習なども予定されているそうで、金正恩の「厳重な警告」にかかわらず、それが実行された場合、どのような反応を示すのか憂慮せざるをえない。