rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年3月25日 国内での対外警戒心喚起の動きを強化

 

 北朝鮮が米韓の合同軍事演習実施などに対抗し各種ミサイル発射などの軍事活動を継続するのと並行して、国内でも、米韓への警戒心を喚起する動きが強化されつつある。

 その嚆矢は、17日から突然開始された青年による人民軍への入隊・復隊を「嘆願」(志願)するキャンペーンであり、その数は、同日だけで80余万名、19日までに140万余名に達したと報じられていることは既に本ブログ(18日、20日)でも紹介したとおりである。

 その後も、こうした動きは継続しており、22日には、平壌市内(青年公園野外劇場)で「無分別な反共和国圧殺策動に狂奔する米帝と傀儡逆徒どもを断固懲罰するための青年学生の集会」が開催された。同集会で、参加者は、「核には核で、正面対決には正面対決で応えるであろうとの我が党と共和国政府の厳粛な闡明が恐ろしい鉄槌となり挑発者どもをいかに懲罰するかを世界に示す時が来たとしつつ、・・祖国統一大戦の先頭に立って疾走する誓いを固めた」とされる。また、その後には、「青年学生の戦時歌謡隊列合唱行進」を実施した。すなわち、隊列を組んで戦時歌謡を歌いながら平壌市内を行進したのである。その結果、「市民たちの胸ごとに頼もしい青年大軍がいて祖国守護戦、革命保衛戦の勝利は我々のものであるとの確信を強めてくれた」とされる(以上、23日付け「労働新聞」)。

 更に、こうした集会・行進が22,23の両日にかけて全国各地(すべての道、直轄市)で実施されたことが改めて報じられた。そこでは、集会の名称は「米帝と傀儡逆賊輩党の無分別な反共和国圧殺策動を断固として懲罰するための青年学生の復讐決起集会」とされ、「復讐決起」という言葉が付け加えられた(24日付け「労働新聞」)。また、こうした集会・行進の模様は、朝鮮中央放送でも特別番組として紹介された。

 本日の「労働新聞」も、また、第1面で「祖国守護の前哨線にいらっしゃる総秘書同志を奉じて忠誠と愛国の力(を)活火山のように噴出させよう」との共通題目を掲げ、「500万青年は決戦進入態勢にある」などと青年学生の動向を改めて称賛・鼓吹する評論・記事を掲載している。

 こうした国内向けの対外警戒心喚起キャンペーンは、18日の本ブログでも論じたとおり、最近では見られなかったものであり、それが加速されていることには注目せざるをえない。もちろん、そこには、そうした緊張感・高揚感を日常の生産活動に振り向けさせようとの企図が明白にうかがわれる(おそらく、それが第一義的な狙いであろう)。したがって、そうしたキャンペーンをもって、直ちに何か対外冒険的な行動の予兆とみなすことは適切ではないであろうが、そうは言っても、米韓への対抗活動が、これまでとは異次元の段階に入ったことは認識しておくべきであろう。