rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年3月27日 評論「強国人民の尊厳と矜持、天地にあふれる」

 

 標記評論は、本日の「労働新聞」第1面に掲載されたもので、「敬愛する総秘書同志が続けて進まれる火線千里を心臓でつき従う全国人民の激情を伝えて」との副題が示すとおり、先般来の金正恩指導下での一連の軍事活動に対する北朝鮮国内の「反響」を論じたものである。

 評論は、まず、そうした活動の結果、北朝鮮の「強国」ぶりが発揮され、国家と人民の「尊厳」「矜持」が大いに発揚されたとして、それを喜ぶ人民の声を次のように紹介している。

 「朝鮮の空がより高くなりました。それだけ我々の自尊心も一層高まり、なんであれ決心したとおりやりとげることができるとの信念が大きくなりました」

 「我が人民と後代たちの永遠の安寧を担保して下さり、祖国の尊厳と位相を最上の境地で轟かせて下さった金正恩同志に感謝のあいさつを捧げたいです」

 そして、そうした国家の「尊厳」は、それを指導する金正恩の「尊厳」と表裏一体であることを次のように主張する。

 「主体の強国に対する人民の矜持と自負は、すなわち天下第一偉人であられる敬愛する総秘書同志を高く奉じた栄光と幸福である」、「敬愛する総秘書同志は、我が国家と人民の尊厳と名誉を歴史上最も高い境地に押し上げ、敢えてその尊厳をいささかでも毀損しようとする仇敵どもを無慈悲に懲罰される万古の英雄、絶世の愛国者であられるとの感激の叫びが千万人民の心臓に沸きあがっている」

 評論の後段では、そうした金正恩に対する信頼が日常の活動に反映されていると主張する。すなわち、「敬愛する総秘書同志が専心万苦を尽くして守って下さり輝かしてくださるこの地に上に人民の理想と夢が実現された社会主義楽園を必ずや打ち立てん。千万人民がこうした火のような信念と誓いで魂をたぎらせて進軍の気勢を高潮させている」「全国が敬愛する総秘書同志の進まれる火線千里に心臓でつき従い社会主義建設の全面的発展のための闘争により大きな拍車を加えている」というのである。ただし、これは、事実を述べているというよりは、かくあれという訴えと見るべきであろう。そのような狙いは、評論の最後が次のように結ばれていることからも明らかである。

 「金正恩同志が先頭に立って進んでおられる愛国献身の道にしたがって強勇な気象を轟かせる偉大な人民よ、勇敢に前進しよう! 勝利から勝利へとより力強く前へ!」

 同評論のこうした主張を読むと、何故、北朝鮮が米韓の軍事活動にかくも執拗に対抗するのかが理解できる。それが「尊厳」誇示の淵源であり、同時に金正恩に対する信頼、忠誠確保の担保となっているからである。換言すると、米韓の圧迫に屈したような状況になれば、体制の求心力が大いに毀損されることになる(と認識している)のであろう。

 また、同時にそうして発揮した「尊厳」に基づく「矜持」「自尊心」が日々の生産活動を支えるモチベーションとして大いに作用している(と認識している)のであろう。

 そうした北朝鮮指導部の認識が正しいのか否かは分からないが、いずれにせよ、そうした発想が支配的である限り、米韓に対する対抗活動はやむことなく、過激に展開され続けるのであろう。

 ちなみに、今日も朝からミサイル2発を発射したそうだが、おそらく単なる発射ではないであろう。今度は、どんな趣向をこらしているのか、明日の北朝鮮の報道が楽しみである。