rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年5月4日 国内での反米・対南対決機運を盛り上げ

 

 「労働新聞」が昨日来、標記に関する記事を連載している。

 まず、3日付け「労働新聞」は、「極悪な核戦争狂信者、売国背族の群れをすべて撲滅しよう 青年学生の復讐決意集会開催、醜悪な仇敵に対する火刑式断行」と題する記事を掲載し、5月2日、信川博物館において、「反共和国核戦争企図を露骨的にあらわした稀世の強盗国家、悪の帝国米国と同族対決に狂った傀儡逆賊徒党を断固として懲罰するための青年学生たちの復讐決起集会」が開催されたことを伝えている。同集会には、社会主義愛国青年同盟委員長・文哲をはじめとする青年同盟幹部、青年学生らが出席し、「決意討論」を行ったのに続き、「侵略者、挑発者の案山子を燃やす火刑式」を断行し、「火を楽しむ者が行くところは、自らが放った火の中であることを示し、米国の老いぼれ戦争首魁と特等下手人である傀儡逆徒の醜悪な姿が灰と化すごとに懲罰の熱気がますます過熱した」とされる。

 また、本日(4日)付け「労働新聞」は、「神聖な祖国の地に核惨禍をもたらそうとする米帝と傀儡逆賊徒党に無慈悲な鉄槌を! 労働階級と職業同盟員の非難集会開催」題する記事及び「祖国に対する愛と仇敵に対する憎悪をみなぎらせた朝鮮女性の気概 復讐決意集会で噴出」を掲載し、前者の集会が「分界沿線都市開城市」において、後者の集会が中央階級教育館において、いずれも3日に開催されたことを報じている。これら集会では、もっぱら討論が行われ、「火刑式」はなかったようだが、前者の集会に続けては、「示威行進」が行われたとのことである。

 更に、本日の「労働新聞」掲載の「千万人民を反米、対南対決戦へと総決起させる直感宣伝物 全国各地に集中掲示」と題する記事は、「年代と世紀を超えて重ねに重ねられた憎悪と報復意志を千百倍に増やし、全国各地に千万人民を反米、対南対決戦へと総決起させるスローガンと宣伝画(ポスター)が集中掲示された」ことを報じている。同記事が伝えるスローガンは、「反帝反米階級闘争を強化しよう!」「国家防衛力をくまなく強化し祖国と人民の安全、革命の獲得物を頼もしく守護しよう!」、宣伝画は、「傀儡逆賊徒党は不変の主敵!」「粉砕してしまおう アメリカ帝国を!」といったものだそうである。

 こうした一連の動向は、尹大統領訪米に際しての米韓の「拡大抑止」強化に関する一連の言動に対する反発が、やや時を置きつつ、それなりのインパクトを伴う(「火刑式」とか前線都市での開催とかの)形で、国内的に伝播されていることを示すものである。ただし、一方で、本日の「労働新聞」の第1面は、農業部門への尽力を訴える記事で埋め尽くされており、前掲記事は第2面以降に掲載されている(青年集会の記事は1面)。また、前掲の一連の集会は、いずれも大衆団体のレベルにとどまっており、党中央幹部の出席は報じられていない。こうした反米・対南キャンペーンをどの程度まで本格化させるつもりなのかについては、更に今後の動向を注視する必要があろう。