rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年5月28日 職業同盟大会フォローアップ

 

 本日の「労働新聞」も、昨日報じた標記大会(5月25,26日開催)に関連して、「社会主義建設の新たな高潮期、激変期を切り開くためのやりがいのある戦闘において職業同盟の威力を力強く轟かせよう」と題する社説及び「主体革命の新時代に労働階級と職業同盟が堅持していくべき綱領的指針 敬愛する金正恩同志が朝鮮職業総同盟第8回大会参加者に送られた書簡に接して」との共通題目の下での職業同盟中央委委員長らの投稿文を掲載するなどしている。その趣旨は、当然ながら、金正恩の書簡に示された諸課題を繰り返すものとなっている。

 なお、青年同盟の大会に際して行われた大会参加者と金正恩との記念写真撮影、講習会、決起集会などに関する報道は、これまでのところない。地方や職場での決起集会程度は今後あるかもしれないが、やはり青年同盟と比べると軽い扱いといわざるをえないであろう。

 ここで、職業同盟そのものの話から同大会に際してみられた、先般来指摘してきた「強国」構想などに関する言説に目を転じたい。

 まず、金正恩書簡中に「社会主義強国」への言及があったことは昨日の本ブログで紹介したとおりである。

 それを受ける形で、本日掲載の前掲社説では、「敬愛する総秘書同志は、書簡において我々が理想とする強国、社会主義社会の本質に対して古典的定式化を下さった。誰もがうらやむことなくいい暮らしをする(잘사는)いきがいのある社会主義生活は決して遠い将来のことではない」としている。ここで注目すべきは、従前「共産主義社会」としていた部分を「社会主義社会」に置き換えていることである。

 ただ、「共産主義社会」という概念が完全に否定されたのかと言えば、決してそうではない。例えば、前掲共通題目下に掲載された黄海製鉄連合企業所職盟副委員長鄭英哲(音訳)の投稿文は、「革命化共産主義化された勤労者として力強く」と題するもので、しかも、文中では「労働階級の道徳と文化によって共産主義社会を建設しようとの党の意図に即して職盟員皆が革命性と戦闘的気質においてはもちろん道徳と文化面でも社会の模範となるようにする」との決意を述べている。「労働階級の道徳と文化によって共産主義社会を建設しよう」というのは、まさにこのところの精神性重視の共産主義社会建設構想を端的に表現しているようにも思える。

 「社会主義社会」と「共産主義社会」というのは、本来、截然と区別された概念であるとあると思うが、以上に指摘したような表現の「揺れ」が、そうした違いを前提にした綱引きないし軌道修正の動きがあることをうかがわせるものなのか、あるいは、そうした区別が曖昧化していることを反映したものなのか、にわかに判断しがたいが、非常に興味のもたれるところである。