rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年9月3日 「戦術核攻撃仮想発射訓練」の実施を報道

 

 本日の「労働新聞」は、「重要目的の対応訓練実施」と題し標記訓練の実施を報じる朝鮮中央通信の記事を掲載した。その骨子は、つぎのとおりである。

  • 背景事情:「(米韓は)8月31日から2日間、数十機の各種戦闘機を動員して連合誘導弾射撃及び航空爆弾投下訓練を敢行し・・軍事的対決企図をより露骨的に見せつけた」
  • 訓練目的:「党中央軍事委員会は敵どもの侵略戦争企図を抑止しうる行動意志と能力を徹底して示威することについての軍事訓練命令を下達し・・我々の強勢により敵どもが引き続き示威したがっている連合空軍戦力の優勢に対するいわゆる自慢感と安堵感がすぐに危機感に代わることであろうと確言した」
  • 訓練実施状況:「敵どもに実質的な核危機に対し警告するための戦術核攻撃仮想発射訓練が9月2日早朝に実施された」、「朝鮮人民軍西部地区戦略巡航ミサイル運用部隊が当該軍事活動を実施した」「発射に先立ち、核攻撃命令認証手続きと発射承認体系の技術的及び制度的装置の迅速な稼働正常性を検閲し、迅速な承認手続きにしたがって、核戦闘部(弾頭)を模擬した試験用戦闘部を装着した長距離戦略巡航ミサイル2発が実戦環境の中で発射された」
  • ミサイル飛翔状況:「清川江河口から・・朝鮮西海(黄海)に発射し、1,500㎞界線の距離を模擬した『8』字型飛行軌道をそれぞれ7,672~7,681秒の間飛行させた後、目標島上空の設定高度150mにおいて空中爆発させ核打撃任務を正確に遂行した」
  • 今後の行動:「中央軍事委員会は、・・核武力の抑制能力を認識させるための攻勢的行動の必要性を再度強調しつつ、すべての核武力が高度の緊張性と動員性を堅持して徹底した戦争抑制力の圧倒的行使によって米国と『大韓民国』軍事やくざどもに大きな脅威に近づいた現実をよりはっきりと認識させることについて強調した」

 同報道は、いうまでもなく、本ブログでも紹介した昨日の巡航ミサイル発射を説明したものであり、米韓の合同軍事訓練への対抗措置としての核戦力使用想定訓練という意味では、8月30日に実施した「戦術核打撃訓練」(戦術弾道ミサイル2発発射。31日付け本ブログ参照)に次ぐものである。ただし、30日の訓練は、総参謀部の命令により実施したとされた(公表も「総参謀部報道」との形式)のに対し、今次訓練は、党中央軍事委員会の命令によるもの(公表は朝鮮中央通信の記事)とされる点では差異がある。両者の間になぜこのような違いがあるのかは明らかでない。

 いずれにせよ、上記報道の表現からは、米韓に「大きな脅威に近づいた現実をよりはっきりと認識させる」ための核抑止力の誇示を継続する姿勢がうかがえる。これまでも繰り返し指摘してきたとおり、当分の間、北朝鮮の活動には鋭意注視の必要がある。

 なお、本日は、金正恩の軍需関連工場視察も報じられているが、それについては、別項で論じたい。