rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年4月17日 金正恩出席下での和盛地区第2段階住宅竣工式実施を報道(加筆版)

 

 本日の「労働新聞」は、金正恩出席の下、平壌市和盛地区第2段階1万世帯分の住宅竣工式が4月16日に実施されたことを報じる記事を掲載した。その骨子は、次のとおりである。

  • 同行者:金徳訓総理と党秘書、内閣、武力機関、省、中央機関の幹部、建設者、平壌市内の勤労者(写真では、趙勇元、朴正天、李日換、金在龍各秘書らの姿)
  • 主な行事内容:①国歌奏楽、②竣工辞(李日換)、③金正恩によるテープカット(実際は帯のような布)、④竣工記念公演、⑤飛行隊の上空飛行・花火発射、⑤金正恩あいさつ
  • 「竣工辞」注目部分:「新しく建てられた林興通りは・・金正恩総書記の熱烈な真心がもたらした為民献身の凝結体であり、人民大衆第一主義理念の崇高さと温かさの世界を後世に末永く伝えるべき記念碑的建造物である」、「和盛地区の全ての建設者が党中央が明示した第3段階、第4段階の闘争目標の遂行に総決起して立派な新しい街を建設することによって、我が首都、我が国家の輝かしい明日のために一層力強く前進していこうと熱烈にアピールした」

 李日換の上記竣工辞を通じて、今次竣工した和盛地区第2段階住宅が「林興通り」と命名されたことが明らかになった。また、今年着工した同地区第3段階に次いで来年度には、同地区第4段階が進められることが改めて示された。

 今次竣工式の特徴としては、記念公演が行われたことである。加えて、その合間に上空を飛行する飛行隊による花火発射なども行っており、祝賀ムードの盛り上げを図ったことがうかがえる。竣工式に工事関係者や入居予定者のみならずその他の「平壌市内の勤労者」も参加させた上で、金正恩の指導に基づく民生面での成果を華々しくアピールし、人民の歓心を得たいとの強い思いがうかがわれる。

 なお、今次竣工の第2段階地区には、金正恩が4月5日に現地指導を行い、「施工で現れた一連の欠点を指摘し、早急に正すための対策を立て(た)」ことが報じられていた(6日付け本ブログ参照)。そうした動きも、前述のようなアピールのための布石であったとえいよう。当然、李日換の竣工辞でも、そのことに言及した上で、前掲のとおり同地区に込めた金正恩の「熱烈な真心」を強調している。

追記:記念公演の状況(2024年4月19日)

 朝鮮中央テレビでの同竣工式に関する報道番組では、記念公演の状況が詳細に放映された。そこでは、女性歌手らが党、金正恩を称賛する歌を次々に熱唱し、合間には、それに唱和する観衆とライトアップされた林興通りの姿が繰り返され、画面には曲名と歌詞が字幕で表示された。歌詞で示された党、金正恩の恩情を可視化する意図がありありとうかがわれる。また、観衆の陶酔ぶりも非常に印象的であった。

 もう一つ注目されるのは、同公演の中で「愛国歌」も歌唱されたことで、その際字幕で示された歌詞は、以前、「三千里」となっていた個所を「この世の中」に改めたものであった。この変更が金正恩の対韓・統一関係用語の改正指示によるものであることはいうまでもない。

 なお、同曲に関しては、韓国・聯合通信の報道によると、その画面上の曲名表記が、16日の同番組放送時には「愛国歌」とされていたところ、17日の再放送時には「朝鮮民主主義人民共和国 国歌」と改められていたとのことである。また、これに対し、韓国の国歌(やはり「愛国歌」と呼ばれる)との差別化を図ったものとの見方も示されている。

 ただし、前述の「労働新聞」記事でも竣工式冒頭で「朝鮮民主主義人民共和国国歌が丁重に奏楽(演奏)された」と記載されていたので、それに平仄をあわせただけとも考えられる。日本で言えば、「君が代斉唱」とするか「日本国国歌斉唱」とするかの違いであろうか。

 いずれにせよ、近年、各種行事冒頭での「国歌奏楽」が恒例化してきたが、最近の傾向として、参加者の中で演奏にあわせて口を動かしている人の比率が増えている(以前は、黙って聞いている人が多かった)ように思われる。将来、日本のように「国歌斉唱」になる日がくるかもしれない。