rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年4月14日 中国党・政府代表団が訪朝日程を終了

 

 本日の「労働新聞」は、訪朝中の趙楽際全人代常務委員長・党政治局常務委員(党内序列第3位)を団長とする標記代表団が4月13日、金正恩に接見したこと及び帰国したことをそれぞれ報じる記事を掲載した。同代表団の訪朝中の主な動向は、次のとおりである。

4月11日

  • 平壌到着:崔竜海最高人民会議常任委員長ら出迎え。主な随員:党中央委員会の劉建超対外連絡部長、全国人民代表大会常務委員会の劉奇秘書長、孫業礼文化観光部長、外交部の馬朝旭副部長、商務部の李飛副部長、中央軍事委員会国際軍事協力弁公室の張保群副主任、国家国際発展協力署の楊偉群副署長
  • 崔竜海委員長と会談:随員ら同席。続けて両国政府・機関間の合意文献の調印式実施
  • 政府歓迎宴会開催:崔竜海、李楽際委員長が演説

4月12日

  • 「朝中親善の年」開幕式に出席(開幕式:東平壌大劇場にて開催。崔竜海趙楽際が演説後、両国芸術団体による開幕式合同公演を実施)

4月13日

  • 金正恩が接見(記念写真撮影後談話。随員同席、北側は金正恩単独)
  • 金正恩主催午餐会(金正恩が乾杯辞。中国側・随員、北側・李日煥秘書、崔善姫外相、金成男党国際部長、金予正副部長が同席)
  • 平壌出発(崔竜海委員長ら見送り)
    • 同日夕方:金正恩は、中国中央民族楽団の特別音楽会を観覧

このうち、金正恩接見時の双方発言で儀礼的部分を除く残りは、次のとおりである。

  • 「(金正恩趙楽際と)『朝中友好の年』を契機に両党、両国の貴重な富である友好・協力関係をより活力あるきずなに昇華、発展させるための多面的な交流と協力を拡大、強化することと、互いが関心を寄せる重要問題について虚心坦懐に論議した」
  • 「(金正恩は)強固な友好の伝統を連綿と継承し、発展させて社会主義偉業を力強く促し、人民に実質的な福利を与えるための両党、両国の共通の意志が「朝中友好の年」の責任ある進展と成功裏の結実につながるとの期待を表明した」

 今次中国党・政府代表団の訪朝動向を概観すると、団長である全人代常務委員長のまさにカウンター・パートとなる崔竜海委員長が会談、歓迎宴はもちろんのこと、自ら空港での出迎えから見送りまでしっかりアテンドしており、更に、金正恩も接見・午餐(更には中国芸術団の公演観覧)と相応の対応をしているので、儀礼的に手厚く歓迎したことは間違いない。

 ただし、談話内容などは見ると、伝統的な親善関係への言及や抽象的な関係強化などの儀礼的・建前的なものが多く、おそらくは北朝鮮が期待しているであろう対米、対韓を念頭に置いた外交・安全保障面での連携強化などを直接表明する文言はほとんど見いだせない。

 ロシアとの間で国際正義実現に向けた連帯・共闘などを謳っているのとは、明らかにトーンが異なるといえよう。

 そのような点を踏まえつつ、開幕した「朝中親善の年」に、両国間で芸術団往来などを超えて、実質的にどのような協調・協力がなされるのか注目していきたい。

2024年4月11日 金正恩金正日軍政大学現地指導を報道

 

 本日の「労働新聞」は、金正恩が4月10日、金正日軍政大学を現地指導したことを報じる記事を掲載した。その骨子は、次のとおりである。

  • 同行者:朴正天中央軍事委副委員長(党秘書)、強純男国防相、李永吉総参謀長、黄炳瑞国防省総顧問と党中央委員会の重要幹部
  • 大学の沿革・位置づけ:「1973年3月7日(創設)・・我が軍隊の中核指揮メンバーを数多く育成」、「我が軍隊の最高級軍事・政治指揮官育成の母体基地」
  • 主な動向:①歓迎行事(学長迎接報告、花束贈呈など)、②「軍事講義室で行う学生たちの作戦戦術授業を参観」、③「教育方法研究および訓練室」視察、④「寝室と食堂」視察(寝室の暖房、食堂で「学生への後方供給実態を具体的に了解」、「自ら用意してきた各種食品で教職員、学生の夕食を調えてやった」)、⑤「作戦研究室」視察(「敵の主要作戦行動企図と敵軍に対する研究状況、教師、学生が作成した軍種、軍団作戦計画」を見る)、⑥教職員、学生らと記念写真撮影
  • 金正恩主要言動:「大学では・・高い統合作戦能力と実戦指揮能力を身に付けた有能な軍事幹部をより多く充実に育成しなければならない」、「敵の数的・軍事技術的優勢に思想と戦法の優勢をもって打ち勝つことは過去も現在も未来も変わらない戦勝の法則」、「今はいつよりも戦争の準備に一層徹底しなければならない時である、我々は単にありうる戦争ではなく必ず勝つべき戦争により確固と、完璧に準備されなければならない」

 金正日軍政大学の存在が明らかになったのは、2020年10月の閲兵式に登場したときであるが、今回の記事により、(おそらくは、その前身が)1973年3月7日に創設されたものであることが示された。

 その学生には、閲兵式の際も、また今次記事添付の写真でも、陸軍に加え海・空軍の軍服を着用している者が含まれており、3軍最高幹部養成のための一種の統合学校であると考えられる。同校が統合作戦能力の付与に重きを置いていることは、金正恩の発言にもうかがわれる。また、添付写真に写っている学生らしき軍人は、大佐ないし上佐の階級章を付けており、将軍一歩手前の軍人が教育対象になっていると考えられる。 

 なお、金正恩の動向に関しては、学生の生活環境への配慮ぶりを強調するのみならず、夕食用の食品まで持参したことが注目される。人心掌握にはまず胃袋から掴めということであろう。そこまでしないといけいない状況なのであろうか。

2024年4月8日 最高人民会議の任期切れ問題について

 

 北朝鮮憲法(第90条)は、「最高人民会議の任期は5年」と定めている。ここで任期の始期については、具体的な定めがないが、選挙の日から第1回会議開催の日の間であろう。

 そして、現在の第14期代議員は、2019年3月10日に実施された選挙で選出され、その第1回会議は同年4月11日に開催されているので、いずれにせよ、その任期は満了を迎える(あるはい既に迎えた)ことになる。

 ただし、憲法第90条は、上記に続けて、「やむを得ない事情で選挙を実施できない場合は、選挙が実施されるまで任期を延長する」としており、直ちに違法状態になるとは言えないが、近年の代議員選挙は、第12期が2009年3月8日、第13期が2014年3月9日に実施されており、前述の第14期の3月10日も含めて、3月上旬実施が恒例化していたといえる。

 しかし、これまでのところ、次期代議員の選挙については、何らの報道もなく、何故、次期の代議員選挙が実施されないのか、それは、いつ実施されるのかが注目される。

 選挙遅延の理由について、韓国での報道では、金正恩が先の最高人民会議第13期第10回会議(本年1月)において、次期会議で対韓政策の変更を反映した憲法改正を行うと述べたことを受け、その改正内容の決定に時間を要しているためとの推測が指摘されている。

 あるいは、昨年の各級人民会議代議員選挙法改正を受け、例えば、複数の候補者を立てる選挙区と単独候補者の選挙区をどのように設定し、誰がどの選挙区で立候補するのかと言った実務的な選挙準備手続きに時間を要している可能性もあろう。

 他方、2021年以降の最高人民会議の開催時期が年初(1~2月)と9月の2回に恒例化していることから、今年も1月の前回会議開催を踏まえて、次回会議を9月開催とすることを念頭に、敢えて選挙を急がない方針であるとも考えられる。

 様々な可能性を踏まえつつ、注視していきたい。

2024年4月6日 金正恩の和盛地区第2段階住宅建設場現地指導を報道

 

 本日の「労働新聞」は、4月5日、「金正恩総書記が完工を控えた和盛地区第2段階1万世帯分の住宅建設場を現地指導」したことを報じる記事を掲載した。その骨子は、次のとおりである。

  • 同行者:党中央委員会主要幹部(写真には趙勇元秘書、朴泰城秘書らの姿)
  • 迎接者:金正官国防省第1副相、朴勲内閣副総理と設計機関の責任幹部、和盛地区第2段階1万世帯分の住宅建設に参加した建設単位の責任幹部
  • 和盛地区第2段階区域の概況:「80ヘクタール余りの領域に1万世帯分に及ぶ様々な形式の住宅が公共及びサービス建物、施設物とバランスを取って便利に配置」
  • 金正恩の主要言動:「党に対する忠実性と堅忍不抜の精神を遺憾なく発揮した建設者たちの偉勲を高くたたえた」、「施工で現れた一連の欠点を指摘し、早急に正すための対策を立て・・仕上げの工程まで質的に、完璧に締めくくるべきであると強調」、「今年建設を始めた和盛地区第3段階と来年に予定されている和盛地区第4段階の展望計画に関する具体的な方向を明示」

 添付の写真には、同地区の景観が示されているが、第1段階が奇抜なものであったのに比較すると、やや地味(よく言えばシック)な印象を受ける。いずれにせよ、4月15日の「太陽節」前後に、改めて竣工式が盛大に行われるのであろう。

 なお、同記事を通じて、平壌市での住宅建設5か年計画の最後に当たる来年度の建設が「和盛地区第4段階」であることが明らかになった。

2024年4月6日 朝鮮労働党代表団、中国・ベトナムラオス歴訪状況(まとめ)

 

 標記代表団(団長・金成南党政治局候補委員・国際部長)の動向について、本ブログでは、3月21日の出発以降、中国での当初日程のみの紹介になっていたところ、4月2日に帰国したので、遅ればせながら全日程を改めて整理してみた。

ア 中国(3月21日~25日、4泊5日 北京、四川省成都

  • 中国共産党対外連絡部長(劉建超)と会談(21日):「(金部長は)我が党の対米、対敵闘争路線と政策について言及した」(中国側のこれに直接対応した発言は紹介なし)、「双方は、両党、両国が社会主義建設と対外関係分野において取っている政策についての互いの支持を再確認し、・・長期的で展望的な眼目で双務関係を全方位的に強化発展させるため党対外事業部門の間の協調を拡大していく立場を表明した」
  • 中国人民政治協商会議主席(王滬寧・政治局常務委員)と会った(21日):「(金部長は)朝中関係が社会主義を核とする真実で固い同志的関係で絶え間なく昇華発展していることについて言及した」、「王滬寧同志は、国際関係がいかに変われども双方の戦略的選択である中朝親善は絶対に揺るがないであろうとしつつ、常に朝鮮を立派な同志、立派な友、立派な隣邦とみなしている中国は、両党最高領導者の重要合意を実質的行動へと転化させ両国人民により大きな幸福を準備し、地域の平和と安全に貢献するであろうと述べた」、「(王滬寧は)国際及び地域情勢問題に対し朝鮮側と戦略的意思疎通と戦術的協同を強化し共同で対応することによって国際社会の正義を推進する中国側の用意を表明した」
  • 中国共産党中央委員会書記(蔡奇・政治局常務委員)と会った(22日):「(金部長は双方が)党建設と国家管理をはじめ各分野でよい経験を交換し、戦略・戦術的協同を強化することについて強調した」、蔡書記は、「血潮で結ばれた中朝親善」に言及、「互いに意思疎通を強化し、実務的協力を深化させて中朝外交関係設定75周年に当たる今年に、両党、両国の親善関係のより一層の発展を積極的に促すであろうと強調した」、「(蔡書記は)党建設と経済発展、人民の生活向上で大きな成果を収めていることをうれしく思うと述べ」た
  • 中国共産党中央外事弁公室主任(王毅・政治局員)と会った(23日):「(王毅は)血潮で結ばれた共同の貴重な富である中朝親善」に言及、「中国は今後も国際舞台で朝鮮との戦略的意思疎通と戦術的協同を絶えず強化して両党、両国人民の共通の利益を確固と守り、中朝親善を発展させていくであろうと確言」

イ ベトナム(3月25日~28日、3泊4日、ハノイ、ホチミン)

  • ベトナム共産党中央委対外部長(레 호아이 쭝)の間の会談実施(25日):「(金成南は)朝鮮労働党対米、対敵闘争路線と政策について言及」、「双方は両党、両国間の政治的紐帯を拡大強化し諸分野での協力を活性化し国際舞台において緊密に支持連帯して双務関係を新たな高い段階に昇らせるための問題を討議し見解一致をみた」
  • ベトナム共産党中央委秘書局常任秘書(조직부장인 쯔엉 티 마이)に会った(26日):「ベトナム金正恩総秘書同志を首班とする朝鮮労働党の領導の下で朝鮮人民が経済建設と人民生活向上をはじめとした社会主義建設でより大きな成果を収めることを心から祝願する」
  • ベトナム共産党ホチミン市党委員会秘書(웬 반 넨党政治局委員)に会った(27日)

ウ ラオス(3月28日~31日、3泊4日、ビエンチャン

  • 党対外関係委員会委員長통싸완 폼비한との会談実施(29日):「(金成南は)我が党の自衛的国防力強化政策と対敵闘争路線の正当性を強調」、「(委員長は)朝鮮半島の平和と安全を守護するための朝鮮労働党と政府の政策を全的に支持すると強調」、「(会談では)国際舞台において相互支持と連帯を強化するための問題を討議」
  • ラオス人民革命党総秘書ラオス民共和国主席(통룬 씨쑤릿)を儀礼訪問(29日):金正恩の口頭親書伝達

 以上の歴訪先3か国要人との会談内容を比較すると、金成南は、いずれの国でも「対米、対敵闘争路線と政策について言及」しているが、それに対する反応は、3国様々である。

 中国では、「血潮で結ばれた」を定型句にして、伝統的友好関係をうたいつつ、「(戦略的)意思疎通」や「戦術的協同」を繰り返し強調されていて、対外政策における突出を牽制され足並みを揃えるよう求められたとの解釈も可能であろう。

 更に、ベトナムでは、内政面での支持しか示されていないようにも見受けられる。

 一方、ラオスでは、「朝鮮半島の平和と安全を守護するための朝鮮労働党と政府の政策を全的に支持」の表明があり、前記2か国よりも踏み込んだ支持を獲得できたのではないだろうか。

2024年4月5日 基幹工業部門における第1・4分期人民経済計画完遂を報道

 

 本日の「労働新聞」は、第1面を費やして、「偉大な変革の進軍速度を加速化し人民経済計画全般を力強く牽引 基幹工業部門において新年度12個重要高地占領のための初分期人民経済計画完遂」と題する朝鮮中央通信の記事(添付写真多数)を掲載した。

 同記事は、各部門及び傘下主要企業所等の1・4分期における人民経済計画取り組み状況を詳細に紹介しているが、各部門全体の遂行結果に関する記述のみを抜粋すると次のとおりとなる。

  • 金属工業:「銑鉄、圧延鋼材、ケイ素鉄、鉄鉱石、耐火物など主要指標の初分期生産計画を遂行した」
  • 化学工業:「全国的な1・4分期窒素肥料生産計画が105%で遂行された」
  • 電力:「全国的な1・4分期電力生産計画が完遂された」
  • 石炭:「全国的な1・4分期石炭生産計画を109%で遂行した」
  • 機械工業:「機械工業省的な初分期計画を指標別で遂行した」
  • 採掘工業:「採掘工業省的な初分期計画が指標別で遂行された」
  • 鉄道運輸:「全国的な1・4分期貨物輸送計画を104%で完遂した」
  • 林業:「全国的な1・4分期丸太生産計画が105%で完遂された」

 昨日の本ブログで、内閣全員会議拡大会議における「初分期人民経済計画完遂」報告に対し、裏付けとなる報道がないとして信憑性に疑問を呈したが、本報道は、まさにそれに応えるものといえる(本ブログを読んで報じたわけではないであろうが)。

 こうした分期(あるいは月)ごとの部門別経済計画遂行状況が数字を含め具体的に示されるのは、比較的異例のことであり、従前に比すると今期の生産が順調に進んだことを示すものと評価せざるを得ない。

 金正恩も指摘しているとおり、平壌市及び各地農村での住宅建設に加え、「地方発展20×10政策」に基づく地方子業工場建設などと並行する形で、こうした基幹産業部門の生産が順調に進んでいるとすれば、その努力はそれなりに評価されるべきであろう。

 ただし、ここで基準とされている「12個重要高地占領のための人民経済計画」がかねて推進中の「国家経済発展5か年計画」と整合的なものなのか、換言すると、この「人民経済計画」を完遂しつづければ、それが直ちに「国家経済発展5か年計画」の完遂を意味することになるとのかについては、なお一層の検討の必要があろう。

2024年4月4日 内閣全員会議拡大会議の開催を報道

 

 本日の「労働新聞」は、標記会議が4月3日、画像会議形式により、金徳訓総理の「指導」の下、開催されたことを報じる朝鮮中央通信の記事を掲載した。同会議の概況は、次のとおりである。

  • 参加者:朴章根、李哲民副総理をはじめとする内閣メンバー
  • 傍聴者:内閣直属機関・省・中央機関幹部と道・市・郡人民委員会委員長、農業指導機関、重要工場・企業所幹部
  • 主な議題:①1・4分期人民経済計画遂行状況の総括、②上半年度人民経済計画遂行及び「地方発展20×10政策」初年度課題実行のための対策的問題
  • 報告主要点(梁勝浩副総理):「新年度12個高地占領のための初分期人民経済計画が輝かしく完遂された」
  • 討論(複数):討論者氏名・内容等まったく言及なし
  • 会議での強調事項:「すべての部門が内閣の決定と指示に無条件服従する厳格な規律と秩序」、「経済部門指導幹部の思想観点と事業気風、執務姿勢に根本的な転換をもたらす」

 同会議の開催は、4半期ごとの定例的なものであり、開催形式・内容も恒例にそったものと言える。

 その中で注目されるのは、「報告」の中で「初分期(=1~3月)人民経済計画」が「完遂された」としている点である。ただ、仮にそれが事実であるならば、盛大に宣伝すべきことと思われるが、これまでのところ、「労働新聞」などでは、この会議報道を除き、そうした報道はない。同発表を信じるためには、もう少し検証が必要と思われる。

 なお、「会議での強調事項」の部分は、誰の発言か明示されていないが、おそらく、金徳訓総理が会議総括のような形で述べた内容ではないかと推測している。いずれにせよ、常に繰り返されている内容で格別の意味はないと言えよう。