rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2025年10月24日 海外軍事作戦戦闘偉勲記念館着工式を挙行、金正恩が出席・演説を報道

 

 本日の「労働新聞」は、標記記念館の着工式が金正恩出席の下、10月23日挙行されたことを報じる記事及び同着工式での金正恩の演説文を掲載した。それらの骨子は、次のとおりである。

ア 着工式概況

・ 記念館建立趣旨:「(ロシアでの)海外軍事作戦で不滅の偉勲を立てた朝鮮民主主義人民共和国の誇らしい参戦英雄たちの永生を祈願」

・ 建立経緯:金正恩が「参戦勇士たちの高潔な犠牲的精神と伝説的武勲を後世に末永く伝える戦闘偉勲記念館の建設を発起・・和盛地区に自ら敷地を定め、精鋭の建設部隊を編成」

・ 参列者:朴正天党秘書、努光鉄国防相、崔善姫外相をはじめとする「党と政府、武力機関の指導幹部、海外軍事作戦参戦者と烈士の遺族、省、中央機関の責任幹部、朝鮮人民軍の各級大連合部隊、連合部隊の指揮官、軍人建設者、青年学生」、「マツェゴラ駐朝ロシア大使と大使館員」

・ 式次第:①金正恩演説(後述)、②北朝鮮、ロシア国歌奏楽、③金正恩、朴正天党秘書、努光鉄国防相、崔善姫外相、マツェゴラ大使らが「鍬入れ」、④金正恩が参戦軍人と対面、負傷者を激励、⑤金正恩が参戦烈士遺族に敬意、⑥金正恩が記念館形成案を見て、建設部隊指揮官に対し信頼・期待を表明

イ 金正恩演説注目点

 記念館の建設経緯

・ 「5月28日、党中央軍事委員会第8期第8回拡大会議は・・朝ロ関係の偉大な象徴となる記念館を立派に打ち建てることを決定」

・ 「今日からちょうど1年前、我々の遠征部隊戦闘員たちの最後の隊伍がロシアに向かって発ちました」

 参戦意義、朝ロ連帯

・ 「聖なるその歩みから朝ロ両国関係が同じ塹壕で血を分かち合う最も高い信頼関係、生死を共にする最も真実で強固な不敗の関係に一層発展した戦闘的団結の新しい歴史が始まりました」

・ 「我々の英雄たちは・・国際反動陣営に大きな不安と恐怖を抱かせ・・正義と平和のための人類共同偉業に大きな貢献をしました」

・ 「崇高な理想と念願を共にする両国人民の同盟は正しい選択であり、高貴な血と命をもって成し遂げた血縁の連帯と友誼は実に神聖で無窮なものです」

 記念館建設の狙いと概況

・ 「我々は、この記念館を建設し・・参戦者たちの英雄的行路を不滅の瞬間として歴史の上に高く刻み付け、共和国の全ての世代が感銘深く仰ぎ見るようにしようとしています」

・ 「ここには・・烈士陵と記念館、記念碑が一体を成して建設され・・軍人たちが印した血戦の足跡と祖国愛の熱い息吹をなんの粉飾もなしに見せる写真や美術作品、苦戦に耐えた痕跡が歴然とした遺物が展示される」

・ 「この記念館の近くに建設されているセッピョル(明星)通りが完工すれば、烈士たちが愛する父母妻子や兄弟と共にいながら言いたかったことを話し合い、まだ分かち合えなかった肉親の情も深めることでしょう」

・ 「この建設によって我が国家の首都には、過去の戦勝と今日の戦勝を証明する二つの記念館が位置することになります・・常に尊敬する戦勝世代の守護精神と不屈の英雄主義が・・70余年の長きにわたってしっかりと受け継がれ、より高い境地へと培養されて・・いることを実証しています」

 同記念館(遺族用住宅含め)の建設は、8月に挙行された海外作戦部隊に対する顕彰・慰労行事に際しての正恩の発言を通じて予告されていた。しかし、上掲演説により、それが党中央軍事委員会第8期第8回拡大会議において決定されていたことが初めて明らかにされた(同会議に関する当時の報道は、「政治的・軍事的意義を持つ重要対象建設(複数)を力強く推進する問題」を討議とのみ表現)

 金正恩の演説で印象的なことは、参戦の意義として、朝ロ連帯を殊更に強調していることである。それは、上掲のような表現に加え、演説の最後を「平壌はいつもモスクワと共にあるでしょう。我々の親善団結は永遠に続くでしょう。英雄的な我が軍万歳! 不敗の朝ロ親善万歳!」との言葉で締めくくっていることに示されている。また、「鍬入れ」にマツェゴラ大使が参加していることも指摘できる。

 こうした主張は当然と言えば当然のものかもしれないが、以前強調していた、北朝鮮軍人の英雄的精神の発揮による北朝鮮自身の抑止力強化という効用などについてほとんど言及がない。うがちすぎかもしれないが、いよいよウクライナ戦争の終戦(停戦?)も視野に入ったと見て、ロシアの「食い逃げ」を牽制する狙いがあるのではないだろうか。

 もう一つ印象的なのは、今次作戦参加を朝鮮戦争と並列的に位置づけていることである。後者を指導した金日成と前者を指導した金正恩を同列に置くことにもつながる。これもうがち過ぎな見方かもしれないが。