rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年4月21日 社説「全党の細胞秘書は我が党の初級政治幹部としての使命と本分を全うしていこう」

 

 標記社説は、先の党細胞秘書大会のフォローアップというべきもので、細胞秘書の役割を「細胞事業、細胞団結の作戦家、組織者」と規定した上で、それをいかんなく発揮するための課題として次のような点を挙げている。

 まずは、「(金正恩総秘書同志の革命思想と革命観でしっかりと武装すること」である。ここでは、とりわけ細胞秘書大会で金正恩が提示した「党細胞に提起される10大課題と細胞秘書が帯びるべき12の品性を自らの骨肉とする」ことを訴えている。

 次に「団結を重視し、細胞内のすべてのメンバーを人間的に団結させる」ことである。そのためには、「集団内に互いに助け導きあう共産主義的気風と道徳観を確立する」こと及び自らが「常に群衆の中に入り込み、彼らの声に耳を傾け、群衆と一つの家族のように胸襟を開いて情けを交える」ことが必要であるとしている。

 その上で求められるのが、「党細胞事業の火力を党8回大会決定を徹底して貫徹することに志向させる」ことである。具体的には、「(細胞内での)党生活総括と任務分担、党員に対する教養事業も戦闘目標を達成することに徹底して志向させ、党員が託された革命課題遂行過程を通じて自らの忠実性を検証されるように」することである。

 あわせて、細胞秘書が「12の基本品性を備えて、事業と生活のすべての面で党員の鏡となり模範となる」ことを求めている。ちなみに、12の基本品性の中には、「率先垂範」が含まれている。改めてそれを強調したものといえよう。

 以上の訴えを再構成すると、細胞秘書が自らの行動を律しつつ、組織のメインテナンス(団結)とパフォーマンス(大会決定の貫徹)を向上させていくことを求めていることになる。これは、まさに世界共通の組織管理の基本に即した要求ともいえるのではないだろうか。

 なお、同社説と関連した解説記事として、「党細胞秘書が帯びるべき基本品性(1) 党性」と題する記事が掲載されている。12の「基本品性」についての連載が今日から開始されるのであろう。同記事によると、「党性とは、党に対する忠実性」であり、換言すると、「党中央を絶対的に擁衛し、党中央の思想と意図のとおり思考し行動し、党政策を貫徹するために自分のすべてをみな捧げる革命精神」だそうである。

2021年4月20日 評論「経済事業に対する党的指導の基本方法」

 

 標記評論は、「経済事業に対する党的指導の基本方法」について、船の「舵取り」に譬え、その具体的在り方を「党委員会が党政策に基づいて経済事業を方向的に、方法的に指導すること」とした上で、その具体的在り方を敷衍している。

 まず、「方向的指導」については、「党委員会の集団的指導(協議)に基づいて、党政策の執行方向と方途を規定し、正しい決定を採択すること」としている。要するに、当該単位が上部から与えられた指示に即して、具体的な目標とその実践方法を策定することである。

 次に、「方法的指導」については、「党員と勤労者を発動して党委員会で討議決定された問題を徹底して執行するように政治的に指導すること」と述べ、①組織を動かし政治事業(思想宣伝活動など)を行う方法、②掌握統制しつつ支援する方法、③総括し再布置(不足点などについて改めて計画を立て直すこと)する方法、などの例を挙げている。要するに計画策定後の実践段階において、それを側面から促進することを意味するといえよう。

 評論は、また、そのような党的指導を実践する上での留意点として「党幹部が行政幹部を差し置いて彼らの事業を受け持つ行政代行型、行政型方法を徹底して排除」すべきことを挙げている。党幹部は、そうした実務にとらわれるのではなく、あくまでも「党の思想と方針を貫徹するための正しい対策を立て、行政幹部が党政策的線から脱線することなく、頑強に実践していくよう」に指導するよう専念すべきことを強調している。また、同時に「行政幹部隊列をしっかりと整え、彼らが党の経済政策に依拠して経済組織事業を進めるよう指導」することも求めている。これは、党幹部が行政幹部に対する人事権を行使し、その活動が党政策の枠から逸脱しないよう監督するよう求めたものといえよう。

 以上、特段新味のある内容ではないが、経済単位における党組織の在り方について簡明に論じたものとして紹介した。

2021年4月16日 金日成生誕109周年に際し多様な慶祝行事

 

 本日の「労働新聞」は、「太陽節」(金日成誕生記念日)にあたる昨15日の様々な関連動向、慶祝行事の様子を報じている。

 まず、金正恩が李雪柱夫人、趙勇元組織秘書、朴正天総参謀長、金予正及び玄松月宣伝扇動部副部長を伴って、錦繡山太陽宮殿を参拝したことが報じられている。ただし、参拝時の写真には、玄副部長の姿は写っていない。なお、崔竜海、李炳哲、金徳訓をはじめとするその他の「党中央指導機関メンバー」については、これとは別途に、同宮殿を参拝したことが報じられた。

 また、金正恩が李夫人とともに、主要芸術団体による慶祝合同公演を観覧したことも報じられた。これには、趙勇元ら4人の党常務委員のほか「党中央委員会部署幹部、職員、家族ら」が同席したという。「職員、家族」の同席が報じられるのは珍しいことであろう。

 一方、一般市民を対象とした行事としては、平壌市内及び各地において、金日成銅像への献花や芸術公演、青年学生の舞踏会などが行われた。加えて、平壌市内では、同日夕方、青年学生の夜会・花火大会が盛大に行われた。

 さらに、各地の「給養奉仕網」(平壌の玉流館、清流館、平壌麺屋、沙里院の慶岩閣、咸興の新興館などのレストラン)も、「名節奉仕」を提供したという。

 このほか、朝鮮中央テレビの15日のニュースでは、この日に合わせて写真館で記念写真を撮る家族連れの姿なども紹介されていた。

 政治的に注目されるのは、いうまでもなく、金正恩の参拝に同行した4人の顔ぶれであろう。趙勇元、金予正、玄松月の3人はいわば「お側役」の常連メンバーであるが、これに朴総参謀長が加わったところが今回の特徴といえよう。ちなみに、趙勇元は、金正恩の細胞秘書との記念写真撮影の際にも、他の高位幹部が現地で出迎えのため整列していた際には姿がなく、金正恩の到着後になって突然、その後ろに出現していることから、金正恩随行してきたことがうかがえる。もともと組織指導部第一副部長を務めていた時期にそういった動き方をしていたので、常務委員に大抜擢された後も、同人の「お側役」的動きには変化がないということであろう。そうした金正恩との物理的距離の近さが権力の何よりの源泉になることを示しているようにも思える。そういう意味で、朴総参謀長の今後の動向にも注目したい。

 

2021年4月14日 金正恩が細胞秘書大会参加者と記念写真を撮影

 

 本日の「労働新聞」は、金正恩が13日、先の細胞秘書大会参加者と記念写真を撮影したことを報じた。

 同大会参加者の動静については、3日に平壌到着、4日に万景台(金日成生家)参観、5日に革命事績施設等参観の後、6日から8日の大会参加を経て、更に9日から11日までの講習参加及び10,11日の記念公演参観などが報じられてきたところであり、今回の記念写真撮影により、到着以来10日余りも平壌に滞在したことが確認できる。地方出身の細胞秘書を大いに厚遇したといえる。その背景には、当然ながら、彼らの今後の「発奮」に対する強い期待があるのであろう。

2021年4月13日 「青春の気迫で偉勲創造の炎を燃え上がらせる 党第8回大会以後、全国各地で青年突撃隊活動一層活発に進行」

 

 標記記事は、先般来、青年の困難部門への進出動向が続く中、各地に組織されている「青年突撃隊」が様々な取り組みで成果をあげていることを称揚するもの。

 冒頭、「進出」動向について、「去る2月から現在まで1,600余名の青年が炭鉱、鉱山、農村をはじめとして党大会決定貫徹のための重要戦区に嘆願(志願)した」とした上で、「全国各地で青年突撃隊活動が一層活発に進行されている」として、次のような例を紹介している。

 まず、企業単位で設置された青年突撃隊の動向としては、順川地区青年炭鉱連合企業所川城(音訳)青年炭鉱金赫青年突撃隊と北倉地区青年炭鉱連合企業所炭夫物資源泉生産事業所金赫青年突撃隊が顕著な成果をあげているのをはじめとして、「全国石炭工業部門の70余個の青年突撃隊において1・4分期計画を超過達成した」こと(「金赫」というのは、革命英雄の名前で、それを突撃隊の名称に冠しているのであろう)や黄海製鉄連合企業所と金策製鉄連合企業において、青年突撃隊が「エネルギー節約型酸素熱法溶鉱炉建設の先頭に立つなど活躍していることを紹介している。

 次に、各地方の青年同盟の取り組みとして、「平安北道青年同盟委員会において市、郡内の多数の青年で突撃隊活動」を展開し、「数百キロメートル区間の水路清掃を実施」し、農業部門に貢献したことや江原道、慈江道、平安北道の青年同盟委員会において、「発電所建設を完成するための青年突撃隊活動」などを行っている例を挙げている。

 冒頭の「1,600名」との数字が、こうした各地の「青年突撃隊」への参加者を含むものであるのか、必ずしもは明らかでないが、いずれにせよ、青年を様々な困難な局面の打開のために動員していることがうかがえる。

2021年4月12日 党細胞秘書大会参加者のための講習会を開催

 

 本日の「労働新聞」は、4月9日から11日までの3日間、標記講習会が開催されたことを報じている。

 そこで報じられた主な講習内容は、①党細胞を総秘書同志の唯一的領導体系が確固として立った真の前衛組織にする問題、②党員に対する党生活組織と指導をより強化し、党員を金日成金正日主義者としてしっかりと準備させる問題、③党細胞を党政策貫徹の前衛隊として強化することに細胞事業の火力を集中することに関する問題などである。このほか、群衆との事業、反社会主義・非社会主義との闘争、社会主義道徳気風を立てるための事業などもとりあげられたとされる。

 講演を実施した人物は特定されていない。

 このほか、10日と11日には、同大会記念の芸術公演が行われ、大会参加者が党幹部らと共にこれを観覧したことも報じられている。

 重要な会議の後、その参加者を対象に講習会、芸術公演などを開催するのは、このところしばしばみられる方式である。講習会で会議趣旨を敷衍し、その周知徹底を図るとともに、公演を通じて情緒・感情の面でもインパクトを与えようとの狙いによるものと思われる。折角平壌に集めたのであるから、とおり一遍の会議だけで終わらせず、こうした行事を通じて会議で伝達した知識ないしそこで盛り上げた意欲の定着を図るというのは、それなりに合理性のある方式といえるのではないだろうか。

2021年4月10日 論説「自分のものに対する愛と信頼が全人民的な思想感情にならなければならない」

 

 標記論説は、「我々の思想と文化、道徳に対する矜持と自負心を持つこと」の重要性を訴えるものである。

 論説は、それが「帝国主義者の反動的な思想文化的浸透策動がより一層悪辣になっている現時期、切実な問題」になっているとして、「時代が前進するのに即して思想文化事業を絶え間なく深化発展させ、難しく苦しいときであるほど、誰もが『一人は全体のために、全体は一人のために』とのスローガンを高く掲げて革命的同志愛と集団的美風を高く発揚していくよう思想事業を強化」することを訴えている。

 なかでも強調されるのが青年層に対する働きかけであり、「青年が我々の思想と文化、道徳に対する矜持感と堅持してこそ、いかなる雑思想にも染まらず、祖国と民族の明日を背負っていく頼もしい働き手」たりうると主張している。

 そして、それを実現するための方法論としては、「時代の志向と文明の高さに合った革命的で高尚な社会主義生活文化を絶え間なく創造し発展させていく」ことをあげている。

 このような主張は、細胞秘書大会での金正恩の訴えとも通底するもののように思える。青年層への対策強調がその端的な例であるが、それにとどまらず、「一人は全体の・・」とのスローガンの強調に示されるような社会的連帯強化の訴えも、それに含まれよう。

 その背景としては、北朝鮮指導部の中で、青年層をはじめ社会全般に利己主義的風潮が蔓延しており、それがこのところの経済困難の中で体制の不安定化要因ともなりかねないとの危機感が強まっていることが考えられる。