rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

9月1日 「統一的な指揮をより強化して 国家非常災害委員会において」

 

 標記記事は、「台風9号の影響による被害防止対策を隙間なく立てよう」との共通題目の下に掲載された記事の中の一つである。

 同記事は、去る7月及び8月の長雨による洪水及び台風8号の影響などに関し、「党の賢明な領導の下に各級党組織と幹部らが正しい危機対応意識を持って予見性ある安全対策を取ったことにより、各部門別被害規模を最小化した」とした上で、国家非常災害委員会が、そこで得た教訓などを踏まえて、「各道に出向いているメンバーとの緊密な連携の下に被害防止対策状況を具体的に掌握し、些細な偏向もその都度、正すようにしている。気象水文局から得た台風の移動経路をすべての部門と単位にリアルタイムで通知する一方、緊急状況が発生する場合、災害防止及び救助、復旧方案に従って処理するようにしている」などとして、同委員会の活動を紹介している。そして、各地の党機関の活動も含める形で、「今、国家の統一的な指揮にしたがって、各地においては台風9号による被害を最小化するための事業が力強く繰り広げられている」ことを報じている。

 ここで注目されるのは、この「国家非常災害委員会」が、全国の各級党組織及びおそらくは軍部隊に対しても、台風被害の復旧及び防止に関し、指揮権を行使していると見られることである。一般的に考えると、「国家」の名称を冠しているいるところから、同委員会は国家機関のようにみえるが、北朝鮮において、国家機関が党機関を指導するということは、(その逆はあっても)通常考えにくいところである。したがって、同委員会については、形式的な所属関係はともかく、実質的には、党中央に直結し、その権威・権限を借りることのできる機関であると考えるべきであろう。

 そして、そのような広範な指揮権限及び前述したような全国各機関に対する指導のあり方(リアルタイムでの個別具体的な指揮)は、コロナ対策を担当している「中央非常防疫指揮部」のそれと非常に類似している。ある意味、双子のような印象さえ受ける。

 そういった意味で、これら危機管理対策を主導しているのが誰なのか、金与正である可能性も含めて、大いに注目されるわけである。