rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

9月1日 党副委員長がそろって台風被害復旧事業を「指導」

 

 本日の「労働新聞」は。李炳哲、朴奉柱及び金才竜(前総理)・李日愌・崔輝・朴太徳・金英哲・金衝俊の6人の党副委員長が、それぞれ黄海南道の台風被害を受けた農場などの復旧事業を「指導」したことを報じる記事を掲載した。李炳哲及び朴奉柱についての記事には、いずれも指導日の記載はなく、6人の副委員長については、「8月30日と31日」としている。

 ここで注目されるのは、何よりも、これら幹部が復旧事業を「指導」したとされていることである。従前、「指導」との表現は、金正恩にだけ用いられており、その他の幹部(と言っても、個別の幹部の動向が報じられるのは、政治局常務委員ないし総理に限定)の視察活動については「現地了解」との表現が用いられてきた。8月30日に報道された朴奉柱及び金徳訓の被災地視察についても、「現地了解」と表現されていた。

 今日の報道で常務委員以外の副委員長にまで「指導」の表現が使用されたことは、やや極端な表現かもしれないが、北朝鮮における「最高指導者」の概念にまでかかわる大きな変化の徴表であるかもしれず、その意義は、特筆すべきものと考えられる。

 二番目は、経済担当以外の李炳哲(軍需工業担当)、金英哲(対南担当)、金衝俊(国際担当)らの副委員長までもが、一斉に動員されていることである。ただ、これは、金正恩が先の台風被災地視察時に「復旧事業に党中央委員会部署をすべて動員」することを指示したことを受けたものと言え(既に党中央勤務員の復旧作業参加は報道済み。本ブログ8月30日記事参照)、党が台風被害復旧事業に総力を集中していることを示すためのいわば演出といえる。前掲の「指導」表現の使用に比べれば、政治的な重要性ははるかに低い。

 韓国の聯合通信は、これら一連の報道を紹介する記事で、二番目の点だけを強調し、台風被害対策に腐心していることを強調する一方、最初の点には言及しておらず、残念な報道といわざるをえない。