rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

8月31日 「党中央」の表現使用例について

 

 本日別項で取り上げた金与正の地位・役割に関連して注目されるのが、かねて、内部的に同女を指す表現として用いられているとの指摘のある「党中央」との表現である。

 本ブログでも、その言葉の「労働新聞」紙上での使用例については、折に触れ検討してきた。これまでの経緯をまとめると、6月ころまでは、金与正を指すと考え得る余地のある使用例を認めることはできなかった。しかし、コロナ防疫活動関連などの最近の用法については、一部に、金正恩とは別の存在とみなし得る余地のある使用例も散見されるようになった。もちろん、だからといって、それと同女を直接結びつけるような根拠が得られたわけではない。そのような例は、管見の限りでは皆無である。

 そこで、思いつきであるが、個別の使用例についての検討を離れて、量的なアプローチを試行してみた。用いたのは、「労働新聞」ホームページの記事検索機能である。ただ、「党中央」という表現で検索すると、「党中央委員会」などもヒットしてしまうので、それを直接検索することはあきらめ、最近、よく目にする「党中央の指示」「党中央の意思」の2語を含む記事について検索してみた。なお、同検索機能は、2018年以降の記事が対象となっているようである。

 顕著な結果が得られたのは、「党中央の指示」で、ヒット数は、25件(当該用語を含む記事の件数をカウント)で、そのすべてが今年7月26日以降に掲載されたものであった。

 一方、「党中央の意思」については、ヒット数61件であり、そのうち2018、19両年に掲載された記事が24件、今年に入って以降は、1月から6月までの半年間が25件、7月は1件もなく、8月は1か月間で17件であった。

 要約すると、過去2年間使用例のなかった「党中央の指示」が7月末以降突如頻出し、「党中央の意思」も、ことしの前半半年間でそれ以前の2年分よりも多く用いられたが、8月には、その半年間の毎月平均(25÷6≒4)の4倍掲載されたことになる。ことしに入って以来、「党中央の意思」がこれまで以上に強調されてきたところ(その大半は、「人民大衆第一主義」ないし「滅私服務」関連の文脈であった)、7月末以降、それとは別次元といえるほどの勢いで、「党中央」の「意志」及び「指示」の強調が加速されているということである。

 以上の分析を通じて、「党中央」に金与正が含まれるか否かを判断することはできないが、少なくとも、コロナ防疫及び災害対応を契機として、金正恩を中心とする求心力の強化が図られていることは間違いないと考えられる。