rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

8月30日 台風被害復旧への取り組みをアピール

 

 標記に関連して、本日の「労働新聞」には、様々な記事が掲載されている。

 まず、朴奉柱党副委員長及び金徳訓総理が、それぞれ黄海南道各地の被害復旧状況を現地了解したことが報じられている。両人は、「炭素ハナ化学工業創設のための対象建設場」を一緒に現地了解したことが25日に報じられていたが、今回は、別々の行動であった。

 次に、「朝鮮労働党中央委員会勤務員たち、黄海南道の農業勤労者たちと共に台風被害復旧戦闘力強く展開」との記事がある。これは、いうまでもなく、先日報じられた金正恩の被災地視察時の指示に基づくものである。同記事は、党中央勤務員が農民らと農作物の被害復旧作業を共に行うとともに食事を共にしたり、被災家庭を訪問して救援物資を伝達したりしていることを紹介した上で、「(こうして)苦楽を分かち合う党中央委員会の勤務員たちの姿は被害地域人民たちに深い感銘を与えた」、「被害地域人民たちは、党中央委員会勤務員たち皆が奮い立って台風被害による自分たちの心の苦衷まで癒してくれていると述べつつ、我が元帥様の懐、母なる党の懐があるために、いかなる天地風波が押し寄せてこようとも恐ろしくないと真情を吐露した」などと金正恩、党の恩情の被災地住民に及ぼした感動を強調している。

 このほか、「全党、全国、全民が奮い立ち洪水と台風被害異復旧を電撃的に推し進めよう」との共通題目の下、論説と各地の取り組み状況を紹介する記事5件が掲載されている。このうち、「党に対する人民の信頼を守るための重大な事業」と題する論説は、「台風と洪水による被害復旧事業は、党の懐を離れては瞬間も生きていけないとの我が人民の信頼をより強固にする重要な事業である」、「このたびの被害復旧事業こそ、人民の信頼と期待に滅私服務のはっきりとした実績と誇らしい成果で報いることによって我が党の偉大性、我々式社会主義の優越性を人民が肺腑で実感するようにすべき愛の激戦である」などと主張している。

 これら一連の記事からは、今次の洪水・台風の被害復旧への取組みを党ないし体制の優越性を発揮する格好の機会として活用しようとの北朝鮮指導部の思惑をうかがうことができる。

 世間では、長引くコロナ防疫の影響に加えての今次の洪水、台風被害などによって、北朝鮮住民の不満が更に高まることを予測する見方が一般的なようだが、北朝鮮指導部としては、むしろ「禍を転じて福と為す」の効果を狙っているとみられる。もちろん、そのような目論見が奏功するか否かは、復旧の結果にもよるのであろうが、それにいついても、ある程度、報道・宣伝の力でカバーできるのではないだろうか。いつもながら、北朝鮮指導部の対応には、「転んでもただは起きぬ」との言葉を想起させられる。