rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

9月2日 論説「党の決定貫徹は幹部たちの役割にかかっている」

 

 標記論説は、党の決定及び指示が貫徹されるか否かは、幹部の働きにかかっているとした上で、そのために幹部に求められる心構えとして、①「党の決定と指示を最も正当なものとして、絶対的な真理として受け止めること」、②「党の決定と指示を一寸も違えることなく最後まで貫徹することは、幹部の神聖な義務であり、革命的本分である」ということを銘記することの2点をあげ、その実践を訴えるものである。

 このような主張は、これまでも繰り返されてきたものであり特段新味のあるものではないが、本文中に、個人的な関心事項に照らして注目された点があるので、その部分を紹介したい。

 第一は、①を論じる中で、「今、我が党は、党会議を正常的に招集し、革命情勢と時代発展の要求に合わせて党と国家活動において提起される重要な問題を討議決定している」との主張が含まれていることである。最近、党関係の会議が頻繁に開催・報道されていることは、これまでに指摘したとおりで、その背景・狙いが注目されてきたわけだが、同論説におけるこのような主張は、そのような会議の頻繁な開催が党の決定・指示を幹部らに「最も正当なものとして、絶対的な真理」として受け入れさせること、すなわち党の決定・指示の権威付けを狙いの一つとしていることをうかがわせるものといえるのではないだろうか。

 第二は、同じく①に関連して、「最近、台風8号による被害規模を最小化することができたのは、すべての党組織と幹部が正しい危機意識を持って、台風被害を徹底して防ぐことに関する党中央の指示を即時接受し、予見性を持って安全対策を取った結果である」としている中で、「党中央」の表現が用いられていることである。同論説の中には、「党」との表現が多く用いられているが、「党中央」との表現が出てくるのはここだけである。すなわち、この部分は、今次台風対応関係における具体的な指揮系統を念頭において論じたものであり、そこに、一般的な意味での「党」とは異なる、「党中央」が実存していることを示唆するものといえないだろうか。なお、引用文中の「(指示を)接受」とは、単に受け取るというだけではなく、それに基づく実践対策を策定することも含む概念である。つまり、「即時接受」というのは、指示を受けたら直ちにその実行に取りかかることを意味すると考えられる。

 昨日の本ブログで紹介したとおり、台風対応を統括しているのは、表面的には、国家非常災害委員会である。しかし、同論説のこのような表現は、実際は、同委員会と表裏一体をなして、ないしはその上部に「党中央」が存在するとの推測を補強するものと考える。

 第三は、②に関連して、「党の決定と指示を無条件に最後まで貫徹するということは、決して言葉のように容易いことではない」ことを認めつつも、問題の原因として、「5分熱度(三日坊主の意か)、中途放棄、安逸性と緊張弛緩、緩慢性と慢性病」など幹部の執務姿勢を指摘するだけで、結局、そのような困難の打開策としては、「絶対性、無条件性の精神」「無限の責任性と献身性を発揮」することを求めるに終わっている点である。よく言えば、思想性重視、悪く言えば精神主義一辺倒という北朝鮮の特徴を端的に示す例といえよう。