2021年5月31日 金正恩の「首領」化が完成
かねて紹介してきた金正恩の「首領」化言説が遂に最終段階に達した。本日の「労働新聞」掲載の論説「忠実性教養は思想事業の基礎であり出発点である」が結論部分で次のように記したのである。
「・・・すべての幹部と党員と勤労者は、主体革命の卓越した首領であられ、稀世の政治家であられる敬愛する金正恩同志を高く奉じた大きな矜持と自負心を抱いて、・・・」(下線は引用者)
ちなみに同論説の趣旨は、「思想事業において基本はすべての幹部と党員と勤労者を敬愛する総秘書同志だけを絶対的に信頼し、従い、党中央の思想と領導に限りなく忠実であるように教養(教育)することである」というものであり、これを換言して、「首領に対する忠実性教養は、党思想事業の基礎であり、出発点である」と表現している。
こうした金正恩「首領」化の狙いを示すのが、同日掲載の評論「首領の命令指示を決死貫徹した労働階級出身の幹部」である。
同評論は、金日成時代に活躍した幹部である玄武光のエピソードを紹介しつつ、同人を「首領の命令指示であるなら、それがいかに大変で困難な課題であっても無条件にやり遂げてやまない決死貫徹の精神の所有者」と称賛した上で、「彼が発揮した首領に対する絶対的な忠実性、首領の命令を適時に最後まで貫徹する火のような熱情と献身的な闘争気風は、党第8回大会決定貫徹に奮い立った我々幹部すべてが従い学ぶべき見本である」と主張している。
こうした主張は、先般来の「戦後復旧建設時期・・」に学ぼうというキャンペーンの一環といえるが、それが真に説得力を持つためには、金正恩が金日成と同様の「首領」の地位につくことが前提になる。金正恩「首領」化は、まさにその前提を充足する作業といえよう。
ただし、それは、論理的な必要条件に過ぎない。現在の「すべての幹部と党員と勤労者」がかつてのような「奇跡」を再現するかは、また別の問題であり、論説上で金正恩をいかに表現するかによってその実現が担保されるわけでないことはいうまでもないことであろう。