rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

3月9日 「隔離解除を規定通り厳格に」

 

 標記は、「党の意図通り先制的で封鎖的な対策をより徹底して 新型コロナウイルス感染症が絶対に侵入できないようにしよう」との共通タイトルの下に掲載された関連記事の中の一つである。

 この共通タイトルの中で「党の意図」に言及されているのは、先月末の党政治局拡大会議において金正恩から感染症対策の徹底についての言及があったことを踏まえてのものであろう。先月までは、その種の表現が感染症対策の記事に関し用いられたことはなかった。そこから推測すると、同会議以前には、金正恩からこの問題に関する直接・具体的な指示はなかったとも考えられる。

 話題を記事の内容にもどし、同記事を通じて、北朝鮮におけるコロナウイルス感染症対策のための隔離措置及びその解除状況について分かることを抽出してみたい。

 まず、隔離対象となるのは、①外国からの入国者(「1次危険対象」と呼ばれる)、②「1次危険対象」に接触した者(「2次危険対象」)である。同記事は、主に、②の隔離及びその解除の状況を説明している。

 上記②は、「自宅又は機関」において隔離され、「隔離場所を防疫学的遮蔽が徹底して保障されるよう整備され、隔離者に対する護送、医学的検査、治療対策をしっかり立てる」ことが要求されている。

 このたび、非常設中央人民保健指導委員会において、②のうち、①に接触してから40日が経過し、かつコロナウイルス感染症と疑われる症状のない者(①と同じところで隔離されている者を除く)について、隔離を解除すること、ただし、医学的監視を引き続き徹底することを指示した。

 この解除に際しては、隔離者一人一人について、機関・企業所責任幹部による接触時からの経過日数の確認、発熱・呼吸器障害の有無などの検診を徹底して行うこととされている。

 江原道では、数日前までの1,020余名の医学的監視対象者が隔離解除された。

 慈江道では、数日前までに2,630余名の医学的監視対象者が隔離解除された。

 これとは、別に、非常設中央人民保健指導委員会の指示に基づき、「隔離期日が30日を超えた外国人」及び「彼らと同じ場所に隔離されていた公務員・通訳員・運転士の隔離解除も規律と秩序にしたがって厳密に実施」されている。

 上記の記事内容を逆算すると「数日前から隔離解除」されている者は、概ね、1月20日ころ以降に入国者と接触した者(前期②)と(それ以前に入国し)1月末ころから隔離されている外国人ということになる。1月末には国境が閉鎖されているから、それ以降の入国者(帰国者=①)との接触者は、それほど多くないであろう。したがって、現在隔離中の者の多くは、格別の症状などが認められなければ、あと旬日のうちに隔離解除されることになるのであろう。また、隔離期間が40日間(しかも、その後も「医学的監視を継続」)ということであるから、解除後の発病の可能性は極めて低いと思われる。そうであれば、北朝鮮の被隔離者は、今後、急速に減少していく可能性が高いのではないだろうか。

 北朝鮮国内の隔離者数が数千人にのぼることを根拠として、北朝鮮国内の感染状況が実は深刻なのではないかと推測する見方もあるが、隔離者数の多さは、北朝鮮の上述のような徹底的な隔離政策の結果であって、感染者有無を直接反映したものとはいえない。むしろ、そのような徹底した措置を講じているからこそ、感染を抑え込むことができているともいえるのではないだろうか。

 本ブログでもかねて指摘しているように、北朝鮮の抱える危険性は、上述記事の対象となっているような公式的な入国者以外に、密かに中国と往来している者が相当数存在することであり、それを通じた感染をいかに防止できるかが隠された焦点であろう。