rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2月1日 社説「新型コロナウイルス感染症を防ぐための事業を強度を高めて展開しよう」

 「労働新聞」が新型コロナウイルスに関し、標記の社説を始めて掲載し、その蔓延が「人類の生存を脅かしている」とまで述べて、文字通り党を挙げての対応を訴えた。同日の「労働新聞」は、このほかにも、「(同ウイルスによる)病の症状と危険性、予防対策」、「世界保健機構が新型コロナウイルス感染症と関連して非常事態を宣布」「世界的に新型コロナウイルスが急速に伝播している」などの記事を掲載している。

 もちろん、同紙は、以前から新型コロナウイルス感染症に関する事実報道ないし対策呼びかけなどを行っており、例えば、1月26日には「新型コロナウイルス感染症を徹底して防ごう」と題する保健省国家衛生検閲院院長の投稿記事を掲載している。また29日には、「新型コロナウイルス感染症を徹底して防ぐには」と題する評論に加えて、世界各国での同ウイルスの蔓延状況を報じる記事を掲載していた。

 更に、1月30日付けの「新型コロナウイルス感染症を徹底して防ぐための非常対策講究」と題する記事は、「党と国家の緊急措置により、非常設中央人民保健指導委員会においては、新型コロナウイルス感染症の危険性が無くなる時まで衛生防疫体系を国家非常防疫体系に転換させることを宣布した。中央と道・市・郡に非常防疫指揮部が組織された」と報じていた(宣布、組織の日付には言及なし)。

 北朝鮮当局としては、概ねこのころから新型コロナウイルス対策のための本腰を入れた取組みを開始したものとみられる。万一、ウイルスが侵入した場合、治療体制等が脆弱であることから、国家存亡の大事として対策に取り組んでいるのであろう。

 しかし、北朝鮮においては、中国に非合法に出国したいわゆる「脱北者」が多数おり、彼らが中国国内における同ウイルス蔓延から逃れるなどのために帰国しようとする場合、処罰を恐れて非公然のうちに入国してしまうおそれが多分にある。しかも、現在は厳冬期で中朝国交の鴨緑江豆満江などは凍結している部分も少なくなく、それだけ密入国も容易な状況にあると思われるだけに、それをいかに取り締まるかが防疫の成否を分かつ鍵となるであろう。