rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

8月5日 コロナ防疫活動と洪水被害防止に引き続き注力

 

 本日の「労働新聞」も、昨日と同様、コロナ防疫活動の徹底と予測される大雨による洪水被害防止対策の徹底を呼び掛ける記事を諸々掲載している。

 前者に関しては、「今日の非常防疫戦は全人民的事業」と題する論説及び「非常防疫指揮部の指揮に一体となって動き強い秩序を立てよう」との共通題目の下、「非常防疫事業の度数をより高く 黄海南道科学技術委員会において」、「厳格な執行で防御を鉄桶のように」、「覚醒し、また覚醒して」などと題して、各地の取組みを紹介する記事がある。

 一方、後者に関しては、「洪水と暴雨被害を防止するための実際的な対策を徹底して立てよう」との共通題目の下、「最大の緊張状態で 果敢な実践力を発揮して」、「農耕地と農作物保護に力量を集中」、「緊急状況に対処した安全対策を綿密に」などと題した記事が、それぞれ各地・各単位の取組みを紹介している。

 このうち、「今日の非常防疫戦は全人民的事業」と題する論説は、「(防疫)事業に自覚的に誠実に参加することは全国すべての人民の違えることのできない本分となる」とした上で、「非常防疫事業を大衆自身の事業へと確固として転換させる」ことの必要性を訴え、そのための課題として次の2点を掲げている。第一は、「人々が非常防疫事業と関連して党で取った措置の正当性を心臓に深く刻むこと」である。第二は、「大衆的な防疫雰囲気を立てること」である。そして、それら活動において、「大衆を導いていく核心になるべき人は党員達である」ことを強調し、その役割発揮を訴えている。

 同論説の以上のような主張は、北朝鮮国内におけるコロナ感染症に対する危機感がさほど高くないことを示すものといえよう。そのことは、一連の関連論調などからも一貫してうかがわれるところである。このことは、換言するならば、一部に伝えられている「北朝鮮国内でのコロナ感染蔓延」との観測を否定するものといえよう。仮にそのような状況が存在するなら、いかに当局が「感染者ゼロ」などの宣伝に努めたとしても、風評などによって人々の心理に少なからぬ影響を及ぼし、現在批判されているような防疫活動への「傍観者的」「慢性的」な態度が生まれるとは考えにくいからである。

 では、何故、北朝鮮がコロナ防疫活動にそれほど執心するのか。もちろん、第一義的には、貧弱な医療体制などに鑑み、万一感染が拡大した場合には、文字通り「取り返しのつかない大災難」になることを強く懸念しているためであろうが、同時に、この活動を通じて、「党中央」の求心力を高めたいとの思いもあるのではないだろうか。

 そのような狙い・願望を端的に示していると思われるのが、同論説も含めこのところ繰り返されている「党中央の指示と布置を無限の責任性と忠実性、献身性を持って、正確に執行する」との表現である。ここで「党中央」が金正恩を中心とするものなのか金与正を指すものかの判断は措くとして、いずれにせよ、この表現は、中央の指示に従って全国民が一致して行動するという北朝鮮の「理想パターン」を示すものである。1990年代中盤の「苦難の行軍」以来、形骸化が指摘されて久しいそのような理想態を「コロナ感染症」という「未曽有の天災」を奇貨として再現しようとの狙いが感じられる。