rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

3月7日 論説「現時期、経済事業体系と秩序を整頓する上で提起される重要な問題」

 

 「経済事業体系と秩序を整頓する」ことは、「正面突破戦」において掲げられた柱の一つであるが、その具体的内容について報じられることは、余りなかった。標記論説は、それを進める上で何が重要かを論じている。

 論説は、それについて3つの柱を掲げ、そのうち「何よりも内閣責任制、内閣中心制を強化すること」が重要であるとしている。

 その筆頭の課題として挙げられるのは、内閣の指導・指揮権限の確立であり、「当面して、国家経済の命脈と全一性(全体性の意味か)を固守するための事業から統一的指導と指揮を保障」することが求められている。その理由は、「経済発展において主動的役割をする経済部門と資源が国家の手中に徹底して掌握されず、一つの線で統一的に管理されなければ、社会主義経済が正常的に発展することはできず、国のやりくりが混乱してしまう」からである。

 内閣機能の強化に関するもう一つの課題が経済計画の実効性確保、すなわち「現実的で実現可能な計画を作成し執行すること」である。とりわけその「執行」に関しては、「強い規律を立て、いかなることがあっても国家計画が動揺しないように」努めることを求めている。

 次の柱は、「経済発展を推動する幹部の役割を高められるよう、全般的な機構体系を整備すること」である。具体的には、「国家の統一的指導が円満に実現されるよう上級機関と中間単位を最小限に簡素化し、執行単位を強化して、各管理機構が企業体の経営活動に必要な条件と環境を便利に保障し監督することを基本機能とみなすようにする」ことを求めている。管理部門をスリム化するとともに、現場に対する後方支援体制の充実を図るということであろう。

 三番目の柱は、「経済管理を改善するための事業を強力に推進すること」である。とりわけ重視されているのが「価格問題を円満に解決すること」である。生産物の価格をいかに的確に設定するかということで、それは、まさに計画経済運営の核心にかかわる問題なのであろう。ほかには、「分散している財政金融体系を整備し、労力と物資、資金の動員管理過程を経済計算体系に徹底して反映させ統制できるように」すること、「国家商業体系、社会主義商業を至急に復元し、国営商業網を通じた商品流通を活性化」すること、「不必要な手続きと承認制度などを整理」することなどがあげられている。ちなみに、国営商業網復元については、その結果、「人民の便宜を保障しつつも、国家の手中に資金が円滑に流れこんでくる」との効用を期待している。

 以上のような主張からは、北朝鮮経済の実情がいかに「計画経済」の看板からかけ離れたものであるか、とりわけ内閣の権限が空洞化しているかが改めてうかがえる。しかし、それ以上に驚くべきは、このような主張が「正面突破戦」提起以来既に2か月が経過した今日にいたっても、提起の時と同様に繰り返されていることである。幹部の意識改革や執務姿勢改善などの問題は、一朝一夕に解決することは困難であり、粘り強い取り組みが必要であることは理解できるが、上述のような制度的問題の解決に何故、それほど時間がかかるのであろうか。各機関・単位の実益が複雑に絡んでいるだけに、その調整に難渋しているのであろうか。当面、4月ころには開催されるであろう最高人民会議において、関連法規の改正などが行えるかどうかが注目される。