rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

1月6日 論説「主体的力を一層強化することは現情勢と革命発展の要求」

 

 この論説は、「生産潜在力を総発動し経済発展と人民生活に必要な需要を充分に保障しよう」との共通題目の下で掲載されたいくつかの記事の一つである。同題目は、全員会議決定書の一項目であり、これら一連の記事は、同項目の趣旨を解説し、あるいは各部門での具体的取り組みを紹介するものとなっている。

 そのなかでこの論説は、「主体的力を一層強化すること」がなぜ必要不可避なのかを内外の状況に照らして解説している。論説がまず提起するのは、国際環境であり、「何よりも米国との長期的対立が既定事実化した現情勢の切迫した要求」により「主体的力」の強化すなわち制裁に耐えうる「自力更生」が必要と主張している。これは、いわば当然の主張であり、既に繰り返されてきたところでもあるので、関連の言及の紹介は省略したい。

 むしろ興味深いのは、論説が掲げる二番目の理由で、それは「我が事業に内在している一連の欠陥と偏向」である。具体的には「自力更生、自給自足しようと引き続き述べてはいるが、これを実行する我々の事業は、過去の惰性から脱皮できないでいる。自立、自強の巨大な偉業をけん引し推動するには不充分であり、大胆に革新できず、沈滞しているのが国家管理事業と経済事業などの現実態である」という。「主体的力の強化」とは、すなわちこういった状況の改善ということでもある。

 そのためには何をなすべきか。結論を先にいうと、生産設備の整備や制度・機構改革などの具体的措置というよりは、むしろ各人の意識改革が念頭におかれているように思われる。すなわち、「我々の前進発展を阻む非正常的で不合理、図式主義的な現象を根絶するための決定的な対策を立て主体的力を一層増大させる事業は、莫大な投資が要求されるものでもなく、多くの時間が必要なものでもない」のであり、各人が「現情勢下で社会主義強国建設に寄与している自らの部門、自らの単位の役割を厳密に確認し、落胆したり動揺したりすることなく、重い課題をしっかりと担い頑強に突進していくとき、我々の政治思想的威力、自立経済の威力は比べようもなく強化され(る)」と主張している。

 論説は、以上の議論を踏まえ最後に改めて「主体的力、内的動力を百方に強化することだけが社会主義勝利の日を促進できる唯一の道」であると強調している。

 これを読んで感じるのは、まず(かねての主張の繰り返しであるが)、「主体的力の強化」以外に発展の道があるとの考え方を払拭したいとの強い思いである。これだけ繰り返すと言うことは、それだけ、そのような考え方が根深く存在すると言うことを反映しているのではないだろうか。

 次に、「主体的力」ないし「内的動力」とは何かといえば、結局は、各人の意識に帰着するということである。「図式主義」というのが何をさすのか必ずしも明らかでないが、おそらく形式主義に近い概念であろう。各人が、自らの職場が果たすべき役割をしっかり認識し、その実現に向けて積極的な意欲を持ち、実際的な工夫をこらしていけば、現存の生産設備等をもってしても、経済はうまくいくということを言いたいのであろう。

 そのような意欲を引き出すための切り札として掲げられているのが「米国との長期的対立」なのであろう。