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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年2月13日 論説「主体的力、内的動力を強化する上で重要な要求」

 

 一昨年末の中央委員会第7期第5回全員会議で「正面突破戦」が打ち出されて以来、それを推進する原動力といった意味で、「内的動力」との表現がしばしば使われ、今次大会以降、改めてその頻度が増しているように思われる。しかし、その言葉を主題として取り上げ、意味についてもしっかりと説明した論調等は、管見の限りなかったように思う。

 標記論説は、それを論じたもので、まず、「主体的力、内的動力とは、我々自体の力、主体的力量として政治思想的力、軍事的力、経済力の総体である。政治思想的力と無敵の軍事力、威力ある社会主義自立経済は、我が国力の基本要素である」との定義を示している。

 その上で、「主体的力、内的動力を非常に増大させる」ための課題として次の3つを挙げている。第一にあげるのは、「何よりも重要なことは、革命の第一の動力である政治思想的力をくまなく固めていくこと」である。そして、「政治思想的力は決して自然に維持される強化されるものではない。それは、ただ思想的一色化、思想的一致を保障するための粘り強く目的意識的な努力、人民大衆第一主義政治をよってのみ輝かしく解決される」としている。ただし、ここで「人民大衆第一主義」については、主に「革命と建設の主人である人民大衆を覚醒させ、団結させて最も力強い存在、力強い力量となるようにする」との意味で用いられていることに留意が必要であろう。要するに人民大衆は、動員の対象と位置付けられているのである。

 第二は、「国の経済力を絶え間なく強化していく」ことである。そして、ここで注目されるのは、経済力の在り方について、「我が国家の力は、政治思想面では一心団結であり、経済的には国家の統一的指導と管理に基づいている」との発想が示されていることである。

 第三は、「国家防衛力をくまなく固めていく」ことである。これに関して注目されるのは、「今、我々の軍事力は、誰も手出しできないほど発展し変わった。しかし、瞬間も自慢し放心してはならない」として、軍事力の継続的な強化の必要性を強調していることである。

 ここでは、2018年4月の中央委員会第7期第3回全員会議において「経済建設集中」路線を打ち出したときのような、核戦力を完成したので今後は経済建設に力量を集中させるといった発想は認められない。むしろ、この論説が示すのは、思想的統一を前提に、経済建設と軍事力(しかも、決して「核戦力」だけに限定していない)の整備を並進させるべきとの主張であろう。また、そのような視点から、今次中央委員会全員会議において、反社会主義・非社会主義的現象対策が取り上げられたことについても、偶然のことではなく、まさに「主体的力、内的動力」の一環としての「政治思想的力」強化の方策と考えることもできよう。

 そう考えると、今次全員会議の金正恩報告においては、軍事力強化に関しても、報道での紹介は非常に簡略化されていたが、実際には相当の言及なり指示があったと考えた方が間違いないのではないだろうか。報道された部分だけを見て、(韓国・統一部のように)「当分は経済建設に重点」と判断するのは、表面的に過ぎるような気がする。