rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年1月16日 評論「党第8回大会の基本思想、基本精神」

 

 標記評論は、本日の「労働新聞」に、「朝鮮労働党第8回大会の文献と決定を深く学習しよう」との副題を付して掲載されたもので、北朝鮮が同大会の「基本」をいかに規定しているかを端的に示すものとして注目される。

 評論によると、「党第8回大会の基本精神、基本思想は、社会主義建設の主体的力、内的動力を非常に増大させ、すべての分野で偉大な新勝利を成し遂げて行こうというもの」であり、「換言すると、我々の内部的力を全面的に整理整頓し、再編成し、それを基礎として、すべての難関を正面突破しつつ、新たな前進の道を開いてい(く)」というものである。

 その趣旨は、「我が党と共和国政府は善意の努力と最大の忍耐心を発揮したが米国の対朝鮮敵対視政策は弱化されるのではなく、むしろより甚だしいものとなった」ことなどをはじめとする「外部的な挑戦」は非常に苛酷であるが、だからと言って、「客観的(外部的の意)条件を口実にすれば何事も成し遂げることはできず・・我々が主体的力を非常に強化していくとき、敵対勢力の反共和国孤立圧殺策動をはじめとしたいかなる外的要因も関係なく、我々式の社会主義建設を粘り強く前進させていくことができる」というものである。

 そして、そのような「内的動力」を発揮する上で肝要なことは、現存する様々な問題点、欠陥などを率直に分析・摘出し、克服していくことであるとして、「我々の前進を拘束している古い事業体系と不合理で非効率的な事業方式、障害物を断固として除去する」、「過去の過渡的な方式から脱皮し、図式主義を克服し、現実に符合しない不合理な点を探し出し至急に正していくこと」などを強く求めている。

 これは、まさに今次大会に貫通した特徴の一つである「親現実性」の主張そのものといえるし、2019年末の第7期第5回中央委員会で打ち出されあ「正面突破路線」とも通底するように思われる。

 同評論の記述の中でもう一つ注目されるのは、「いかなる侵略勢力も絶対に神聖な我が共和国を見くびることをできなくした(今日の)条件においいて、今後に残されたことは、人民がこれ以上苦労を知らず、満ち足りた文明的な生活を心ゆくまで享受するようにすることである」との主張である。これは、端的にいえば、今後は「経済建設優先」路線を進むと宣言するものであろう。大会の「基本思想、基本精神」を論じる中で、このような主張がなされていることの意味は軽視すべきではないであろう。

 ただ、北朝鮮指導部の主観的意図はそうであるとしても、本当にそれが実現できるのかについて疑問を抱かざるを得ないのは、過去においても同様の主張が繰り返されてきにもかかわらず、結果的にはそれが実践されなかったからである。すなわち、2018年4月の第6回中央委員会において「経済建設集中」路線が提起された際も同様の主張がなされたことは記憶に新しいし、遡れば金正日体制下の1998年、「政治・思想強国」「軍事大国」「経済大国」の三つの側面を兼ね備えた「強盛大国」の建設を目指すとの路線が提起された際も、既に「政治・思想強国」「軍事強国」の課題は実現されているので、残された最大の課題は「経済大国」実現であるとの主張がなされたと記憶している。いずれにせよ、この問題は、今後の北朝鮮分析の中心的課題の一つとして慎重かつ粘り強い検討を要すると思われる。