rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

5月13日 評論「愛国の心と心が合わされば大きな力を生む」

 

 「愛国心」が現下北朝鮮における思想宣伝で重要な位置づけを与えられていることは、昨日の本ブログでも言及したところであるが、そこで浮上するのは、そこでいう「国」とは、いかなる国なのか、歴史的な「朝鮮」なのか、あるいは現存する「朝鮮民主主義人民共和国」なのか、という疑問である。

 標記評論は、「敬愛する最高領導者金正恩同志の名言解説」との副題に示される通り、金正恩の標記の言葉を敷衍するものであるが、その疑問に答える内容となっている。

 評論いわく、「愛国心は、祖国に対する愛の感情であり、社会制度に対する愛着である。換言すると、主体の祖国に対する熱烈な愛の心であり、真の生命と幸福の揺籃である社会主義我が祖国を世間で最上の国として輝かせようとの燃える心である」。前述の質問に即して言うと、答えは明らかに後者なようである。

 評論は、また、そのような愛国心の発露として具体的に期待されるのは、どのような行動かについての疑問にも答えている。すなわち、「誰かが命じたり知ってくれなくても、富強祖国建設に支えとなるなら、それ以上を望むことはないとの一念を抱いて、常に思索し探究し血がにじむほど実践していく」ことである。

 それを一人だけが実践しても効果は小さいが、「その愛国の心と心が合わさっていけば、国の富強繁栄を推し進める巨大な力となる」というのが、「名言」の趣旨であるというのが本評論の結論といえよう。

 そして、そのような考えに基づくより現実的な訴えとして、「(皆が)愛国の心を合わせて、最大限に増産し節約して、我々のものをより多く創造し、極力大切に使うとき、国の自立経済の威力は限りなく強化され、我々の暮らしもより潤沢になるようになる」と主張する。

 その上で同評論は、「金正日愛国主義」の概念を取り上げ、その実践を次のように訴えて、結びとしている。

 「金正日愛国主義社会主義建設の威力ある武器である。時代と革命は、全国に金正日愛国主義の熱風を強く起こし高揚した愛国の力、一心団結の威力で社会主義強国建設の勝利を促進していくことを切迫して要求している」。

 ここでも、「金正日愛国主義」の意義について格別の説明はなされていない。結局のところ、「(金正日がそうしたように)愛国心を発揮すること」とほぼ同義に用いられているようである。

 昨日のブログで書いたように「愛国心」発揮の訴えが期待する行動が非常に日常的なことがら(上述の例で言えば「増産・節約」)であることが、この評論によっても、裏付けられた考える。それらを訴えるために「愛国心」まで動員せざるを得ないところに北朝鮮が思想面で一種の危機的状況に陥っていることが表れているというのは言い過ぎであろうか。