rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2月16日 「光明星節」関連動向

 

 今日2月16日は、いうまでもなく金正日の誕生日(=「光明星節」)である。当然、本日の「労働新聞」は、社説「偉大な金正日同志の高貴な愛国偉業を永く輝かしていいこう」をはじめとして、関連記事が満載である。

 このほか、金正恩錦繍山太陽宮殿を訪問したことも報じられた。久々の動静報道である。同行者は、崔竜海、朴奉柱及び金才竜以下の党中央委政治局メンバーであった。韓国の報道では、平素よりも同行者の数を絞ったのはコロナウイルス感染症対策との指摘もある。過去にも政治局メンバーでの訪問という例はあったように思うが、それだけでなく、昨年は2月15日に開催された金正日誕生慶祝中央報告大会に関する報道がない(おそらく未開催なのであろう)ことから、同対策への配慮から、大規模集会などは極力控えられているとみられ、金正恩の行動・同行者にもそれが反映されていると考えて間違いないであろう。

 上掲社説に話を戻すと、そこで金正日の業績を種々列挙しているが、その中に「核兵器」に直接言及する表現はない。業績の一つの柱として、「先軍の旗幟高く我が共和国と人民の尊厳と安全を固く守護」したことは上げられているが、その中では「特に前世紀末年代」における困難時における対応が重視されている。

 ただし間接的には、金正日のそのような「先軍革命業績」の結果として、「我が祖国は世界的な軍事強国の地位に堂々と昇り立ち、対外関係分野において驚異的な現実が繰り広げられるようになった」「敵どもが望み択ぶいかなる形態の戦争と作戦、戦闘にもすべて対応できる無敵の力を備蓄し、国際政治舞台の中心において人類の正義と平和をかたく守護していく威風堂々たる国」になったなど、核戦力保有を前提としたかのような表現はなされている。

 一方、同社説は、金正日の業績の別の柱として、「主体朝鮮の絶対兵器である一心団結を輝かしく実現」したことを挙げ、「領導者と人民の混然一体は、国家の存立と発展を担保する最強の武器」であり、「物理的力には限界があるが、一心団結の威力は無限大である」と主張している。ここにも、核兵器を「万能の宝剣」と称したかつての主張との乖離がうかがえる。

 金正日の業績における核武装をめぐるこうした曖昧な表現ぶりは、2月2日付け本ブログでも紹介したところであり、現下の対米交渉状況などを踏まえた、極めて意図的なものと考えられる。その狙いは、端的に言えば、今後、核放棄にも核開発再開にも、どちらにも進みうるフリーハンドを維持することであろう。