rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2月15日 評論「潜在力と予備を最大限に」

 

 本評論のサブタイトルは、「科学技術で原料、資材、設備の国産化を積極的に推進しよう」というものである。したがって、「原料、資材、設備の国産化」において、いかなる「潜在力と予備」があり、それらがいかなる役割を果たすのか、あるいはどのように活用されるべきなのか、などが論じられていることを期待して読んでみた。

 しかし、結論を先に言うと、本評論は、それらの点にはほとんど言及していない。むしろ、それらの「国産化」のために必要となる研究課題を列挙して、その促進の重要性、必要性を繰り返すところに力点がおかれている。そこで挙げられているのは、「経済発展において鍵となり戦略的な意義を持つ原料と燃料を国内資源で保障する生産技術工程を確立し、先端設備をはじめとして、切実に要求される技術手段を我々の実情にあわせて生産保障するための研究」及び「最新科学技術に基づき、人民経済の主体化水準を高め、既に準備されている自立的経済土台と国の資源を最大限、効果的に利用するための研究」などである。

 一方、その実現のための方法論は、簡略というか通り一遍のもので、それも精神論に重きが置かれているとの印象を禁じ得ない。すなわち、方法論についての記述は、「すべての部門、すべての単位の幹部と勤労者は、我々のものが第一であり、自分の力が第一であるとの確固たる信念、提起されるすべての問題を我々の技術、我々の資源、我々自体の力で解決していくとの非常な覚悟と不屈の意志を持って、すべての潜在力と予備を最大限に動員利用し、原料、資材、設備の国産化を大胆に実現していかなければならない」とするだけであり、「潜在力と予備」について、それ以上の言及はしていないのである。

 結局のところ、評論の重点は、原材料との国産化推進に向けての「確固たる信念、非常な覚悟と不屈の意志」の扶植にあるように見受けられる。それさえあれば、「無から有が生じる」とは言えないから、「無」の代わりに「潜在力、予備」との表現を用いたのではないだろうか。

 そして、そのような主張の背景には、これまでそれらの国産化が進捗していない最大の原因は、人々の気持ちがそれに向いていないためである、との現状認識があると考えられる。長年にわたって「自力更生」のスローガンを掲げてきた北朝鮮においても、人々の心の中には、なお「対外依存」「輸入病」が根強く残っているということであろうか。